不動産エージェントが持つべき海外不動産事情~バンコクレポート

先日、タイのバンコクに行ってきました。

目的は、現地の不動産調査やセミナーの参加など。タイは現在、チーク材の伐採が禁止されているため、木造の家が建てられない。そこで、日本の杉材などを使えないかという実証実験を行っているのです。

それらの視察と併せて、現地の不動産物件の様子なども見ることができました。

そこで今回は実際に目の当たりにした、バンコクの不動産事情などについてお伝えしたいと思います。

バンコクの印象

バンコクはタイの首都で、人口は600万弱。都市圏人口は1,000万人を超えると言われています。

実際にバンコクを訪れてみると、高層ビルが立ち並んでいて思ったよりも都会!という印象を受けます。

ASEANの中心地で、日本だけではなく欧米からも多くのロングステイ、リタイアメント組が生活しているだけあって、東南アジア有数の国際都市というのもうなずけます。

(バンコク中心部の様子)

話には聞いていましたが、それにしてもバンコクの渋滞はひどいですね!

アフターコロナで外国人が戻り始めているということもあり、活気を取り戻しつつあるバンコクではラッシュ時を中心とした渋滞が状態化しています。

私も見事にその渋滞の洗礼を受けました。これでは時間の約束もできず、仕事の生産性も上がらないのでは?と思いましたが、それは地元のタイの人たちも同じらしく、バンコクでは高架鉄道のBTSや地下鉄のMRTの拡張工事がどんどん進んでいるそうです。

私もBTSに乗ってみましたが、山手線なみに混んでいる!やはりタイの皆さんも渋滞を嫌って鉄道を利用するんですね。

バンコク滞在中は他にもトゥクトゥク(三輪タクシー)や、バイクタクシーも利用しました。

街全体に活気があって、昭和の頃の日本のような雰囲気。その中に一部、近未来が混ざり込んでいる。

それが、私のバンコクの印象です。

実際に見せてもらったバンコクの物件①

最初に見せていただいた物件は、日本人が多く住むスクンヴィット・トンロー地区から通りを一本大きく外れた場所に建つコンドミニアム。バンコクの賃貸住宅は大きく分けてアパートとコンドミニアムの二種類があり、日本のマンションにあたるのがコンドミニアムです。

コンドミニアムの入り口にあるロビーは広々としていて、まるでホテルのよう。

このコンドミニアムにはプール、フィットネスジム、ラウンジ、屋上シアターなども完備されていました。

40平米のお部屋の家賃は日本円で55,000円ほどだそう。日本では考えらられない安さです。

その部屋は13階にあり、それが格安の理由の一つだと仰っていました。「13」はタイ語の幽霊を表す文字に見えるらしく、(欧米とは別の意味で)タイでは不吉な番号なんだそうです。そのため、エレベーターのフロア表示も「13」ではなく、「12A」となっていました。日本人が「4(死)」や「9(苦)」を好まないのと似ているのかもしれません。面白いですね。

バンコクの住宅はほとんどRC (柱と梁がRCであとはブロック)となっています。地震がないため、耐震構造にする必要もなく、高層ビルも心配になるくらい細長い。非常にシンプルに建てている印象を受けました。

シロアリが多いため、木造は厳しいようですね。分譲住宅も多く、同じようなデザインの家が立ち並んでいました。

ちなみに、バンコクのコンドミニアムは一通りの家具や家電が備えられているので、身一つで入居できるそうです。

実際に見せてもらったバンコクの物件②

続いて見せていただいた物件はバンコクの外れ、お隣の県との堺にあるバーンスー地区のコンドミニアムでした。

このエリアにはこれまで長らくバンコクの玄関口だったフワランポーン駅に代わる、バーンスー中央駅(東南アジア最大規模の駅なんだそう)が新しくでき、再開発が進んでいるそうです。多摩エリアのようなイメージでしょうか。

案内していただいたのは、27階にあるお部屋。リビングにベッドルーム、キッチンで計32平米。こじんまりとしていますが、機能的で住みやすそう。

何より部屋からの眺望が圧巻です。

(部屋の窓からのバンコク中心部の眺望)

このコンドミニアムにもプール、フィットネスジムのほか、図書室兼コワーキングスペース、サウナが設置されていました。

リゾートホテルをイメージしたというプール。

設備もしっかり整ったジム。当然、エアコン完備です。

プールのすぐそばにある、コワーキングスペース。フリーWiFiもしっかり飛んでいます。

案内してくれた方も、ここで仕事をしていると仰っていました。

タイの人もサウナに入るんですね!

これらの施設・設備は、住人なら無料で利用できるとのこと。

一年中暑いタイでは、コンドミニアムにプールとジムがあるのは普通なんだそうです。羨ましい話ですね。

こちらの部屋のお家賃は、日本円で約32,000円とのこと。

27階といえば、日本では立派なタワーマンションです。それが中心部から少し外れているエリアとはいえ、この値段なんて信じられないんですね。

聞けばコロナ禍で外国人が国に戻ってしまったため、全体的に家賃も下がっているのだとか。

それにしても、バンコクの賃貸住宅の家賃は予想以上に安くて驚きでした。

バンコクでの不動産エージェントの役割り

バンコクには日本人駐在員を主な顧客とする不動産屋さんもあることはありますが、その数は圧倒的に少ない。

では一般の人はどのように不動産物件を探すのかというと、ほぼネットなんだそうです。

物件情報サイトで気になる物件を見つけると、そこにはLINEのQRコードが表示されています。それはその物件を担当する不動産エージェントの連絡先で、彼らにコンタクトを取って内覧。部屋が気に入れば契約、という流れになります。

そう、バンコクでは不動産エージェントが不動産取引で中心的な役割りを担っているのです!

バンコクのコンドミニアムは、基本的に分譲。つまり、各部屋ごとにオーナーがいることになります。そのため、部屋の内装や家具、家電類はもちろん、家賃も部屋によって異なります。

オーナーは自分の所有する部屋を、不動産エージェントに託すわけですね。

エージェントの本場アメリカのように、不動産エージェントが活躍しているバンコクの様子にとても感銘を受けました。

ただ、今回お部屋を見せていただいた日本人の方に伺うと、タイ人の不動産エージェントの質はピンキリなんだとか。

コンタクトを取っても、こちらが日本人だからなのかか、返信すらよこさいエージェントも多いそう。

内覧などの約束の時間に遅れることも当たり前で、契約の段になって条件が異なること(設置されているはずの洗濯機がなかった等)もあったそうです。

このあたりはもしかすると、我々がお手伝いできる分野なのかもしれません。

バンコクの不動産エージェントとコネクションを作って、我々日本人エージェントがタイに転勤・移住する日本人クライアントに物件を紹介する。もしくは逆に、日本の不動産を買いたいタイの富裕層にこちらの情報を提供することもできるでしょう。

双方にしっかりとメリットが生まれる形を作った上で、我々日本人エージェントが得意とする丁寧な接客や、クライアントに寄り添う姿勢をタイのエージェントたちに伝えることができるかもしれません。

国をまたいだ不動産エージェントのつながりについては、今後の課題として考えていきたいところです。

バンコク不動産 その光と影

実際の物件の様子を見せていただいて、とても有意義な視察となりましたが、バンコクの不動産についていくつか気になる点もありました。

その一つが、今回参加したセミナーでも話題となったタイの洪水対策。

バンコクという名前には「水の都」という意味もあるそうで、蛇行して流れるチャオプラヤー川のほかにも、大小多くの水路や運河が網の目のように入り組んでいます。

さらにもともとがデルタ地帯ということもあって、大雨になるとたびたび洪水を引き起こすのです。

バンコクの雨はスコールといって、激しい雨がザッと降ってすぐに止むのですが、先日は珍しく長雨となり、各地で洪水や冠水となったそうです。

見せていただいた写真では、家の前の道路がほぼ川になっていました。しかも場所にもよるそうですが、この水がなかなか引かないんだそう。

セミナーでは、タイの住宅開発で水害の対策を施していることを謳った開発はあるのか訪ねましたが、そうしたものはないそうです。

日本人の感覚からすると信じられませんが、地元の人にとっては洪水も当たり前。それこそ「マイペンライ(なんとかなるさ)」ということなのでしょう。

別の点は、さらにやっかいな問題です。

というのも今回訪れたコンドミニアムの屋上から、開発途中で放置されたビルが目に飛び込んできたのです。

建設途中で放り出され、廃墟となったビル。実はこれ、バンコクでは珍しくない景色だそう。

どうしてこんなことが起こるのでしょうか?

もちろん事情はまちまちでしょうが、大きな理由は資金繰りの悪化。

バンコクではコンドミニアムを建てる際に、モデルルームを公開して先に部屋の購入者を募集します。

しかし購入者が予想よりも集まらない場合、資金繰りが悪化して建設がストップしてしまうことがあるのだとか。

にわかに信じられない話ですが、これがタイの現実なのです。

こちらは今や観光名所(?)にもなっている、サトーン・ユニークタワー。バンコクを代表する豪華絢爛なビルを建てるはずが、1997年のアジア通貨危機の影響でビルを完成させるための資金が失われたそうです。それが20年以上も放置されているわけですね。AirPodsの看板が掲げられているのが、とてもシュール。

問題は廃墟ビルだけではありません。

こうした高層ビルやコンドミニアムの建設は、タイ人よりも人件費の安い、ミャンマー人やラオス人などの外国人出稼ぎ労働者が担っているそうです。

彼らは現場の近くに掘っ立て小屋を建て、そこで住み込みで働く。しかしそのほとんどが労働ビザを持たない不法労働者のため、ケガや万一のことがあっても補償は出ない。もちろんタイ当局も彼らの存在を知っていますが、タイ人がいわゆる3Kの仕事をやりたがらないことと、安い外国人出稼ぎ労働者がいなくては国内の経済も回らないということで、見て見ぬふりをしているわけです。まるでどこかの国のようですね。

経済発展を続けているタイですが、日が強く当たればその分、影も強くなる。

バンコクの不動産業界も、多くの闇を抱えているのでしょう。

しかし、それは日本も全く同じ。

我々不動産エージェントがクライアントの幸福実現のために働くのは当然のことです。しかしそれだけではなく、不動産業界全体の問題点もしっかりと意識しながら、みんなが幸せになれる方法を探っていきたいものです。

グローバル化が進む中で、不動産エージェントも目の前の仕事をこなすだけでは時代に取り残されてしまいます。

海外の不動産についての見識を広げることは、不動産エージェントとしても必ず役立つでしょう。

今回はバンコクの不動産の様子をお伝えしましたが、今後も引き続き海外の不動産事情をお伝えしていきたいと思います。





この記事を書いた人

不動産エージェント 藤木 賀子

スタイルオブ東京(株)代表。
25歳で建築業界に入り、住宅・店舗・事務所・外構の営業・設計から施工まですべてを経験。
世界の建築に興味があり、アジア・北米を中心に建築を見て回り、いい家を追求すべく世界の家を研究。結果、いい家とは『お客様の価値観』にあることに気づき、自分が作るよりお客様の代理人としてお客様の想いを可視化・具現化・実現化することが出来る不動産プロデュースの道に。
これまでの経験とスキルを、不動産エージェントとして活躍したい人に向けて発信中。






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