不動産エージェントの営業/セールス方法

不動産エージェントとしてクライアントを見つける方法は、「不動産エージェントのための集客方法」で取り上げました。

そこでも説明している通り、集客の基本的な考え方としては、

  1. 様々なコミュニティに参加する
  2. 自分を常にアピールする意識をもつ

ということになります。

では、不動産取引に関心のある人が実際に自分に声をかけてきたら、どのように話を進めていけば良いのでしょうか?

今回は不動産エージェントのセールス方法について考えますが、その前にまずは一般的な不動産会社とエージェントの営業方法の違いについて理解しておきましょう。

不動産会社とエージェントとの営業方法の違い

不動産会社の一般的な営業マンと、エージェントではセールス方法が全く異なります。

それはなぜかと言うと…

・不動産会社の営業マン:物件を中心に考える

・不動産エージェント:顧客を中心に考える

こうした基本的な考え方の違いがあるからです。

ではその点を、さらに詳しく見ていきましょう。

一般的な不動産会社の場合

物件の売買を中心にしている一般的な不動産会社においては、やはりいかに手持ちの物件を販売するか、ということを中心に考えます。

(もちろん、不動産会社の中にもエージェントのように振る舞う営業マンもおられますが、ここでは一般的な不動産会社について説明しています)

そのため、不動産会社の営業マンは物件を売ることに一生懸命になります。当然ですよね。

目の前のお客さんにその物件のメリットを懸命に伝え、買ってもらうように「説得」します。

不動産会社ではたいてい販売ノルマがあったり、販売実績に応じた給与体系となっていますから、営業マンもどうしても「売る」ことが最優先となってしまうのです。

オープンハウスでの現地販売会をイメージすると分かりやすいでしょう。

もちろん、その物件がとても魅力的で、購入者にとっても願っていた通りのものだったということもありえます。

しかし多くの場合はそう上手く話が進むことはなく、営業マンは一生懸命に説得を続けることになります。

結果、お客さんに嫌われてしまって、営業マン自身も凹んでしまう…。ということも少なくないのです。

一般的な不動産会社の営業マンの考え方をまとめてみると…

  • 販売することが第一目標
  • お客の都合よりも物件を売るほうが優先される
  • とにかく「今」売りたい

こうして書くと不動産会社の営業スタイルは悪いことばかりのように見えますが、必ずしもそうともかぎりません。

不動産会社の営業マンは不特定多数のお客様を相手にしますから、物件のセールスポイントを強調して販売を促進するほうが効率は良いわけです。

物件のセールスポイントを一生懸命に訴え、そこに魅力を感じる人に購入してもらう。

これが、一般的な不動産会社の営業マンの基本的なセールス方法と言えるでしょう。

不動産エージェントの場合

何度もお伝えしている通り、不動産エージェントは顧客の幸福追求のために働きます。

そのため物件ではなく、クライアント中心に考えます。

  • 目の前の物件を誰に売るかを考えるのが不動産会社の営業マン
  • 目の前の顧客にどんな物件を紹介したら良いかを考えるのが不動産エージェント

と言うこともできるでしょう。

不動産物件という「モノ」を売るのではなく、クライアントの幸福という「コト」を追求するのが不動産エージェントですから、まず顧客のことを先に考えます。

そのため、不動産エージェントは無理に物件を売りつけるようなセールス方法は取りません。

それは顧客にとっても迷惑ですし、エージェントとしても無駄な営業をする必要がないため効率的ですらあります。

むしろ不動産はクライアントの幸福を実現するための手段と捉え、彼らが本当に望んでいる「コト」は何かを見極める。

そのためにクライアントの話をよく聞き、その上で最適な物件を探し出します。

セールス方法に関する不動産エージェントの考え方をまとめると…

  • 物件ではなく、顧客中心
  • 顧客を説得するのではなく、顧客の話をよく聞く
  • 顧客の望む「コト」を実現する物件を紹介する

ということになるでしょう。

不動産エージェントのセールス方法

では、不動産エージェントはどのように物件を紹介しているのでしょうか?

その具体的な方法を探るために、実際にあった事例をご紹介しましょう。

ある時、お客様から友人(Kさんとします)が住宅探しで悩んでいるので相談に乗ってもらえないか?という連絡をいただきました。

Kさんに実際にお会いして、どんな物件を探しているのかお話を伺います。

その上でKさんの年収やお仕事、家族構成や自己資金などの物件を見極める上で必要な情報を尋ねました。

そうすると、Kさんの話しの中に矛盾点が見つかってきます。

Kさんは不動産のことをご自身でかなり勉強しておられる様子で、家の性能やデザインにこだわり、希望する場所の土地を購入した上で注文住宅を建てたいと仰っています。

しかしKさんの年収や自己資金額では、望み通りの物件を実現するのは難しい。

早い話が、理想と現実にギャップがあるわけです。

これは別に珍しいことではありません。

希望する土地に自分の理想とする住宅を建てようとなると、やはりそれなりの資金が必要となります。

しかし不動産取引では、入り口と出口をよく考えなければなりません。

物件を買う・建てることが目的ではなく、その物件が自分たちの生活をどのように豊かにするかが大切です。

希望通りの物件を建てても、それによって生活が苦しくなっては意味がないわけです。

そのため、無理なくローンを支払えるような資金計画を立てるべきですし、将来売ることになるかもしれない、ということも考えに入れておかなければなりません。

Kさんのお仕事や家族構成を考えると、毎月の支払いにあてられる金額は限られています。希望通りの家を建てようと思うと、もっと土地が安い場所を探さなければなりません。

そこでKさんにこのように提案しました。

お気持ちはよく分かりますが、この計画は現実的ではありません。大切なのは楽しく暮らすことです。

希望通りの住宅を建てようと思うと、かなり離れた場所の土地を探さなければなりません。それは本当にKさんとご家族のためになるでしょうか?

どこに住むかということを優先的に考えて、折り合いを探っていきませんか?


Kさんはこの提案に納得いかない様子でした。

しかし、不動産エージェントの役目はクライアントの幸福を追求することです。

そのために、ハッキリと現実を伝える必要もあります。

無理な依頼を安請け合いしても、クライアントのためにはなりません。こちらも無駄なエネルギーを使うだけで、だれも幸せになれないのです。

Kさんからはその後、建築会社が土地を探してくれることになった。仲介手数料も無料だ、という連絡をいただきました。

そうですか、それは良かったですね。また何かあればいつでも相談してください、と伝えて終話しました。

しかしそれから1年後、再びKさんから連絡が入ります。相談したいことがあるのですが…、とのこと。

こうなることはある程度、織り込み済みでした。

案の定、建築会社はKさんの希望するような土地を見つけられなかったとのこと。

そのため、改めて相談に乗ってほしいということでした。

この1年でKさんもだいぶ学んだようで、こちらの意見にも素直に耳を傾けてくださいました。

条件を一つずつ一緒に整理し、提示した案もしっかりとご納得いただけました。

その結果、希望していた高機能住宅はあきらめ、自分たちの住み慣れた場所で中古建て物件を購入するという結論にいたることができました。

早速、良い条件の物件を3つピックアップし、Kさんにお伝えしました。

その週末にKさんが一番気になったという物件を一緒に内見し、では次の家を見に行きましょうと伝えると、Kさんは「この物件でいいです」と。

場所的にもちょうど良く、日当たりも良くて気に入りましたとのこと。

即決となりました。

奥様は「これで私も眠れます」とつぶやかれました。

やはり、知らない土地に家を建てるのは不安だったそうです。

契約後、奥様の好みに合うようにキッチンやトイレ、壁紙などを新しくする打ち合わせをしている間、奥さんはニコニコしていてとても幸せそうでした。

そしてそんな奥様の様子を眺めているKさんも、とても嬉しそうにしておられました。

クライアントの幸福を追求するのがエージェントの本分

では、この例からどんなことが分かるでしょうか?

やはり、不動産エージェントが追い求めるのは不動産取引そのものではなく、それがもたらすクライアントの幸福である、ということです。

Kさんの例でいえば、Kさんの希望するような物件を建築できるように動き回ることもできたでしょう。

しかし、それは本当にKさんとご家族のためになったでしょうか?

おそらく、希望する住宅を建てるために住み慣れない土地に引っ越すことになれば、大きなストレスを抱えることになったでしょう。

逆に場所にこだわると、自分の希望する物件とはかけ離れてしまって、それも不満になったに違いありません。

そうではなく、まずKさんとそのご家族が幸せに暮らすためにはどうしたら良いかを先に考え、それに合った物件を提案したのです。

そのためにクライアントから煙たがれることがあったとしても、そこで引いてはいけません。

クライアントの幸せを願うからこそ、本当のことをしっかりと伝えるのです。

もしそれで離れてしまうクライアントがいたとしても、無理して追いかける必要はありません。

自分と価値観を共有できる人を顧客にし、彼らのために働くことがお互いにとって幸せな不動産取引となり、結果として効率も上がるのです。

不動産エージェントは顧客の代理人であり、彼らの本当の願い、幸せを形にする「イタコ」のようなものです。

そのため、無理に物件を売り込むことはしません。

むしろ、売り込むのはエージェントしての自分自身です。

不動産取引の成約そのものではなく、いつでもクライアントの幸せを考え、それにあった提案をする。

それが、不動産エージェントのあるべきセールス方法なのです。

実践型!不動産エージェントのセールステクニック

ここまで紹介してきた通り、不動産エージェントの基本的な考え方は物件優先ではなく、あくまでもクライアントを中心に考えるというものです。

しかしもちろん、クライアントによってもセールス方法は異なります。

不動産に対する考え方も、人間性もクライアントによって様々だからです。

その中で重要なのが、いかにクライアントの本音を引き出すかということ。

「〇〇に住みたい」とか「~な物件が欲しい」というのがクライアントの本当の望みなのか、そしてそれが本当に彼らを幸せにする物件かどうかは分からないからです。

そのため、クライアントの話をじっくり聞きながら、彼らの本当の望みを可視化する「対話力」が求められれます。

この点については、「単なるコミュニケーションにあらず!不動産エージェントに求められる「対話力」とは?」で詳しく説明していますので、ぜひご覧になってください。

またセールスにおいては、相手を行動へと促す「クロージングトーク」も非常に重要です。

取引をまとめるために、クライアントの背中を押して上げるわけです。

しかしその背中の押し方も、クライアントのタイプによって使い分けなければなりません。

慎重な人には物件の条件などの細部をしっかりつめて、相手を安心させてあげる必要があります。

逆に衝動的な人には、あわてて契約しないようしっかり落ち着かせなければなりません。

それもこれもやはり根っこにあるのは、クライントの幸福な暮らしを実現させるため、ということに尽きます。

こうしたより実践的なセールス方法については、改めてご紹介したいと思います。

まとめ

不動産エージェントと、一般の営業マンとではそのセールス方法は全く異なります。

あくまでもクライアントを中心に考え、彼らの幸せな生活を実現させる物件を紹介するのが不動産エージェントの役目です。

無駄な営業をする必要のないこうしたセールス方法は、エージェントにも幸せな働き方をももたらすのです。