不動産エージェントに求められる「対話力」とは?

不動産エージェントに求められる「対話力」とは?

単なるコミュニケーションにあらず!

不動産エージェントは単に物件を紹介する人ではなく、クライアントの願いを叶える「幸せの代理人」です。

そのクライアントの願いを叶えるために不可欠なのが、「対話力スキル」です。

今回はこの対話力スキルに関して、以下の点を取り上げます。

  • 対話と会話の違い
  • 不動産エージェントに求められる対話力とは?
  • 対話の実践方法
  • 対話力スキルの伸ばし方

では、一緒に考えていきましょう。

対話と会話の違い

対話と会話、どれも似たように思えますが、この2つにはどんな違いがあるでしょうか?

簡単にいうと、会話と目的には次のような点で異なります。

会話は日常的なコミュニケーション、おしゃべりのことです。

おしゃべりは目的がなくても成り立ちます。むしろ、会話そのものが目的ということさえありえます。

しかし対話は、ある目的を達成するための手段に過ぎません。

例えば、「今日はいい天気ですね」と天気についてのとりとめのない話しは「会話」です。

一方、釣りに行くための予定を立てるために、天気について話すことは「対話」となります。

もちろん、不動産エージェントとしてクライアントと対面するには、会話力も必要です。

しかし、会話だけでは目的を達成することはできません。

不動産エージェントに求められる役割りは、顧客の希望する「コト」を見極め、それに最適な物件を紹介することです。

そのためには、クライアントの望む幸福な暮らしを「可視化」し、それを実際の形に「具現化」し提案する。そして最終的に契約・成立というかたちで「実現化」することが求められます。

とはいえ、クライアントが望む幸福な暮らしを簡単に見極めることは必ずしも簡単なことではありません。

なぜなら、クライアントのイメージは時として漠然としていて、自身でもハッキリしていないことも多いからです。

そのクライアントの漠然とした「幸福な暮らし」のイメージを可視化し、具体的に提案するという目的のために話し合う。これが不動産フリーエージェントに求められる「対話力スキル」なのです。

不動産エージェントに求められる対話力スキルとは

不動産エージェントは自分のためにではなく、あくまでもクライアントの幸福実現のために行動します。

そのためには、「人間力スキル」の項でも述べましたが、いわば『いたこ』のようにクライアントの考えを自分に乗り移さなければなりません。

クライアントとの会話は、あくまでもクライアントの本当の希望を引き出し、その情報をもとに提案することが目的です。

単なる会話ではなく、行動につながるための対話。それが求められるのです。

不動産エージェントの対話と行動の特性

対話は目的達成の手段ですから、当然として対話と行動はセットでなくてはなりません。

優れた不動産エージェントは対話の中でクライアントが本当に望んでいることをしっかりと理解し、「〇〇さんのお望みはこういうことですよね?」と、顧客の望んでいることを答えることができます(可視化)。

そして、その可視化されたクライアントの希望に応じた行動を取ります(具現化)。「〇〇さんの希望に叶うのは、こういう物件ではないでしょうか?」というふうに。

対話によって相手が望む返答と、相手が望む行動を取る。

この両方ができてはじめて、クライアントの本当に欲しい物件を販売することができるのです。

この点をより良く理解するために、他の例と比較してみましょう。

一般的なセールスマンの対話と行動の特性

これは、一般的なセールスマンの対話と行動の特性を表した図です。

もちろん、セールスマンの中にも不動産エージェントのように本当に顧客の幸福のために行動する人もいます。しかしここではあくまでも自社の商品を販売することに熱心な、一般的なセールスマンを例にしています。

セールスマンは基本的に、自社の商品を販売するために行動します。

その商品が優れていれば、顧客との対話がなくても(つまり会話だけでも)、販売することは可能です。

例えば、お値打ち価格の建売住宅を販売しているメーカーのセールスマンがいるとしましょう。

顧客には自身の望む幸福な生活のイメージがありますが、セールスマンが建売住宅を販売するにはその願いを汲み取る必要はありません。

お値打ち価格という商品価値を押し出して、セールストークが行えるからです。

しかしそれは、不動産エージェントに求められる対話ではありません。

顧客に物件を紹介するという行動は取れていますが、顧客が望む返答(願いの可視化)はできていないからです。

その物件は本当にクライアントが願っている幸福を実現させるものでしょうか?

対話によってそこを聞き出していないため、知る由もありません。

商品が良ければ売れるでしょうが、それでは自分が売りたいものだけしか売れません。

つまり、お値打ち品の物件を買いたいという顧客の希望と、そうした物件を売りたいというセールスマンの希望が一致したときしか販売することはできないのです。

不動産セールスマンとしてはそれでも良いでしょうが、不動産エージェントとしては困ります。

不動産エージェントの行動主体は、あくまでもクライアント。

自分の売りたいものを売るのではなく、クライアントの願う幸せな暮らしを実現するための物件を紹介する。それによって、本当の満足感を与えることができるのです。

ダメなサラリーマンの対話と行動の特性

もう一つの例を見てみましょう。

ダメなサラリーマンの行動特性です。

ここで言うダメなサラリーマンとは、上司から「◯◯やっておいて!」と指示された時に「分かりました!すぐにやります!」と答えるものの、実行しない人。または上司に対してゴマをするような言動を取るのは得意だけど、本心ではない。そんなサラリーマンです。結構いるでしょ?こういう人。

こんなダメなサラリーマンは、上司の望む答えはしていても行動できないため、行動が伴っていないので逆に信頼を失います。

対話とは、あくまでも特定の行動を成し遂げるための手段です。

その行動が取れないのであれば、それはそもそも対話ではありません。

クライアントの本当の望みを引き出し、それを実現するために行動する。そのための会話なのです。

では、実際にどのようにクライアントと対話を行えるでしょうか?

対話の実践方法

対話は単なる会話ではなく、クライアントの本当の望みを引き出すための手段。

とは言っても、いきなり相手の本音を引き出そうと色々と質問しても、逆に警戒されてしまうでしょう。

クライアントにとって不動産エージェントは、何でも話せる気の許せる友人ではないからです。

ですから対話の前にまずは、相手からある程度の信頼を勝ち取らなくてはなりません。

ですから対話の前にまずは会話を行って、クライアントとの間の打ち解けた雰囲気を作ります。

そのために役立つのが、クライアントのタイプ別の話し方です。

タイプ別の話し方

人間は初対面の人と話す時に、話の内容よりも「話し方」によって高感度が大きく左右されます。

そのため対話のためにはまずその入口として、クライアントのタイプに合わせた話し方を心がけましょう。

タイプは例えば、次の4つに分けられます。

これはあくまでも一例ですが、人はそれぞれ異なるタイプ(個性)を持っていますから、それに合わせた話し方を心がけることによって、相手に受け入れられやすくなります。

ただ、そうはいってもすぐに相手のタイプに合わせた対応を取るのは難しい。

そのため、話の「内容」よりもまずは「話し方」に注意しましょう。

人間は自分と同じ声のトーン、同じようなスピードの話し方をする人には自然と警戒心を解く傾向があります。

そのため、クライアントとのファーストコンタクト時には相手の話し方のトーンに合わせて話しかけましょう。

その上でクライアントが話好きな人なのか、それとも警戒心が強い人なのかという、タイプに合わせた話し方を心がけます。

このようにクライアントのタイプ別の話し方でまずは会話を行うことによって、対話のための土台を作ることができるのです。

相手の本音を引き出す「5W2H」の質問力

タイプ別の会話によってある程度の信頼関係が築けたら、クライアントの本音を引き出すための対話を行います。

そのときに効果的なのが、「5W2H」を使った質問です。

  • Why(なぜ):なぜ物件を求めているのか?
  • What(なにを):どんな物件が欲しいのか?
  • Who(だれが):だれが物件を探しているのか?
  • When(いつ):いつまでに購入するか?
  • Where(どこで):どんなロケーション?
  • How much(いくら):予算はいくらか?
  • How to manage(どのように):全体的な要望は?

5W2Hでいちばん大事なのは「Why(なぜ)」の質問です。

クライアントの本当の希望を引き出すには、そもそもその物件をなぜ求めているのか?という部分を可視化しなければならないからです。

しかし、この「Why(なぜ)」はそこだけにとどまりません。

「Why(なぜ)」以降の質問に関しても、「Why(なぜ)」を重ねていきます。

例えば、「When(いつ)」の質問に対してクライアントが、「来年の4月までに物件を購入したい」と答えたとします。

そのときにすかさず、「なぜ4月なのだろう?」と考えて、4月までに購入したいという理由を尋ねます。

そうすると、クライアントは「実は子どもが来年中学校に上がるので、そのタイミングに合わせたい」と答えるかもしれません。

それが、クライアントの本当の望みということになります。

単に4月という漠然とした理由ではなく、子どものために物件を購入するという顧客の本当の希望が分かれば、その願いを実現するために動くことができるわけです。

このように、それぞれの質問に対して「Why(なぜ)」を重ねて質問していくことによって、クライアントの本音を引き出すことができます。

それが分かれば、後はそれを実現するために行動するのみ。

「幸せの代理人」である不動産エージェントは、クライアントの幸福実現のために働きます。

クライアントの願う幸福の形は、質問によって可視化していきましょう。

対話力スキルの伸ばし方

不動産エージェントに必須の対話力スキル。

そのスキルを伸ばすためには、やはり普段からの努力が必要です。

「Why(なぜ)」の質問を重ねるのも、普段からの意識付けが大切。

例えば、Youtubeを見ている時にも、「なぜこの人はこんなことを言っているんだろうか?」、「そもそもなぜYoutubeに出ているのだろうか?」と、なぜ?の質問を習慣化していきます。

しかし、対話力スキルはそれ単独で伸ばせば良いというものでもありません。

3つのスキルはやはり循環している

幸せな働き方を追求!不動産エージェントに必要な3つのスキルとはでも説明しましたが、・知識・人間力・対話力という3つのスキルは相互に関連し、循環していきます。

対話力スキルに注目しても、質問してクライアントの本音を引き出すには、知識が不可欠。

しっかりとした知識がなければ、そもそも自分の知らない答えが返ってくるのを恐れて、質問することもできないからです。

また、対話のためにクライアントからの信頼を勝ち得るには、やはり人間力を高めることが一番です。

このように、対話力スキルを高めるためには、知識と人間力という3つのスキルを同時に高めていく必要があります。

3つのスキルは循環していますから、それぞれのスキルを高めることによってプラスの相乗効果をもたらし、さらにスキルが向上していきます。

そのためにはやはり、前回お伝えした「当たり前の習慣化」が非常に大切。

何のために努力するか?そのためには何が必要なのか?といった点を明確にして、努力することが当たり前になるまで続けていきましょう。

まとめ

対話とは単なる会話ではなく、クライアントの幸福を実現するという、不動産エージェントとしての目的を達成するための手段です。

対話によってクライアントが本当に実現したいと願っている「コト」を可視化し、それを叶えるための行動を取り続けます。

そして対話のためには、顧客のタイプに合わせた話し方によって対話のための土台を作る。

その上で「5W2H」に「Why(なぜ)」の質問を重ねることによって、クライアントの本当に望んでいる「コト」を引き出していくことが必要です。

対話力スキル単独ではなく、「当たり前の習慣化」を意識しながら、知識、人間力のスキルとともに高める努力を続けることが優秀な不動産エージェントには欠かせません。

単なるコミュニケーションにとどまらない、目的のための対話力を引き続き磨いていってください。

では次回は、最後に残ったスキル「知識」について考えてみましょう。










この記事を書いた人

不動産エージェント 藤木 賀子

スタイルオブ東京(株)代表。
25歳で建築業界に入り、住宅・店舗・事務所・外構の営業・設計から施工まですべてを経験。
世界の建築に興味があり、アジア・北米を中心に建築を見て回り、いい家を追求すべく世界の家を研究。結果、いい家とは『お客様の価値観』にあることに気づき、自分が作るよりお客様の代理人としてお客様の想いを可視化・具現化・実現化することが出来る不動産プロデュースの道に。
これまでの経験とスキルを、不動産エージェントとして活躍したい人に向けて発信中。






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