不動産エージェントにとって必要な「人間力」とは?
不動産エージェントにとって必要な「人間力」とは?
人間力スキルの伸ばし方
不動産エージェントにとって不可欠な3つのスキル。
- 知識
- 人間力
- 対話スキル
今回はその中の「人間力」というスキルについて考えてみましょう。
不動産エージェントに求められる「人間力」とは?

「人間力とは?」と尋ねられて、すぐに答えられる人は多くはないでしょう。
それほど曖昧な言葉ですが、実は内閣府によって設置された「人間力戦略研究会」が人間力を明確に定義しています。
それによると、人間力とは「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」とされています。
要するに、社会を生き抜いていく一人の人間としての力ということでしょうか。
この定義によると、「人間力=自分自身の力」とも言えるかもしれません。
しかし、不動産エージェントに求められている人間力はそうしたものではありません。
不動産エージェントに必要なのは、自分自身や自分の手持ちの物件を売り込む力ではなく、常にクライアントの立場にたち、クライアントの利益を追求することだからです。
そのために必要なのが、
「承認力と共感力」
です。
- 承認力=クライントの希望や価値観を認め、それを相手に伝えること
- 共感力=クライアントと同じ立場に立ち、願いを共有すること
不動産エージェントはいわば、『いたこ』のようなものです。
自分のアイディアではなく、あくまでもクライアントの願いを自身に乗り移らせ、クライアントの代理人として行動します。
もちろん、乗り移られても困る人、相容れられない考えを持つクライアントも存在します。
そうした人はブロックしても構いません。不動産フリーエージェントはあくまでも『フリー』な立場ですから、困ったクライアントを断ることも自由です。
しかし基本的には、まずクライアントの「こうしたい」という願いや価値観を認め、それが相応しいものであることを相手に伝えます(承認力)。
そして次に、そのクライアントの立場に自分を置き、その願いを実現させるにはどうすればいいかを考えます(共感力)。
クライアントは不動産に関しては素人ですから、中には理不尽な要求をしたり、無茶なことを言ってくることもありますが、そうした時でも相手のことを受け止める「承認力と共感力」こそが、不動産エージェントに求められる人間力なのです。
例えば、クライアントから「海の近くの見晴らしの良い場所に建つ一軒家が欲しい。予算は◯◯円くらいで」というリクエストを受けたとします。

不動産会社の営業マンなら、自社の物件の中からその希望に近い物件をすぐさまピックアップして、それを紹介するでしょう。
しかし、不動産エージェントは違います。
優秀な不動産エージェントは、そのクライアントが実現したいと願っている『幸せな暮らし』が何かを、じっくり考えます。
なぜなら、クライアントが本当に求めているのは物件そのものではなく、その物件がもたらしてくれる『幸せな暮らし』にあるからです。
そうしたクライアントの希望を実現するには、ひたすらそのクライアントの願いに寄り添わなければなりません。
もちろん不動産の営業マンの中にも、あくまでも顧客の立場にたって、顧客のために力を尽くす人もいます。
そして、そうした人こそが優秀な営業マンとして認められているのでしょう。
そうした不動産の営業マンは、不動産のセールスマンというよりも、むしろ「不動産エージェント」と呼ぶべきではないでしょうか。
不動産エージェントとの違いは、独立しているかどうかの立場の違いにすぎません。
会社に属していても独立していても、クライアントのために行動する人はやはり、不動産エージェントなのです。
不動産エージェントは「幸せの代理人」
不動産エージェントはノルマのためではなく、クライアントの幸せのために働きます。
しかし中には、リクエストが漠然としていて、彼らが本当に望むことがイメージしにくい場合もあります。
そのような時にも、
- クライアントがその物件を望むのはなぜか?
- クライアントが叶えたいと願っているのはどんな将来?
- その願いを実現できるのはどんな物件だろう?
といったことを繰り返し考え、クライアントの願う『幸せな暮らし』を追求します。
その時にエージェント自身の好みや、売りたい物件のことなどは微塵も頭によぎりません。
ただひたすら、クライアントの願いを叶えることに注意を向けます。
もしその結果として、現時点で不動産を購入することがクライアントのためにならないと判断するなら、それも正直に伝えます。
もしその物件が成約したとしても、後でクライアントが後悔するなら、お互いにとって良いことは何も無いからです。
彼らの願う『幸せな暮らし』は実現できませんし、クライアントから後で恨み言を伝えられことほど、仕事をしていて残念なことはないですよね。
クライアントの思い描く願いやイメージを、目に見える物件として可視化させるのが不動産エージェントの仕事です。
クライアントの願いや価値観を認め、自分のことのように考える「承認力と共感力」を備えているからこそ、不動産エージェントは顧客のために行動し、その願いを叶えることができるのです。
承認力と共感力が成功の鍵
不動産エージェントに求められる人間力は、「承認力と共感力」だということは理解していただけましたか?
しかし一方で、クライアントの希望を聞いているだけではビジネスにならない、と考える人もいます。売れるものを売るのが商売であり、売れなければビジネスにならないというわけです。
一見するとそれも正しいように思いますが、根本的なところで誤っています。
なぜなら、ビジネスの成功の基本は、顧客の幸せを追求することにあるからです。
「近江商人と三方よし」という有名な言葉があります。
商売人は売り手の都合だけで商売をするのではなく、買い手が心の底から満足し、さらに商売を通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献しなければならない。という考え方です。
「売り手によし、買い手によし、世間によしの『三方よし』」というビジネス哲学は、その始祖である伊藤忠兵衛が興した伊藤忠商事だけではなく、現代でも多くの企業の経営理念の根幹となっています。
クライアントの希望をとことんまで追求する不動産エージェントの働き方は、まさにこの「近江商人と三方よし」に合致するものです。
クライアントの幸せを叶えることが、自分の成功につながる。
そのためにはやはり、「承認力と共感力」が欠かせないのです。
不動産エージェントとしての「人間力」を伸ばすには?
不動産エージェントとしての人間力、つまり「承認力と共感力」を伸ばすにはどうしたら良いでしょうか?
不動産エージェントの「承認力と共感力」がクライアントを伝わるには、やはり実際の行動に移さなければなりません。
自分の頭の中でいくら色々と考えを巡らしても、それが目に見える形で示さなければ意味がないからです。
クライアントからリクエストを承ったら、それをすぐに言葉や行動で表す「クイックレスポンス」が何より重要です。

顧客の側としても、自分の希望をエージェントがすぐに受け止めてくれて共感を表したり、具体的な提示をしてもらえると安心できますよね。
もちろん、レスポンスが素早いだけではダメで、そこにクライアントが納得する「事実」が伴っていなければなりません。
蕎麦屋の出前がいくら「いま出ました!」と言っても、いつまで待っても来なければイライラが募るばかり。
同じようにいくらレスポンスが早くても、そこにクライアントが納得するだけの中身がなければ、反感を買ってしまいます。
現状で、自分がクライアントのためにどんな行動を取っているのか?という事実をしっかり伝えること。
クイックレスポンス+中身を伴わせることを常に意識しましょう。
クライアントの信頼を勝ち得るためにも、すぐに行動に移しましょう。
もちろん、クライアントの望むような物件がすぐに見つかるわけではありません。
そのような場合でも、「今こういった物件を探しています」と小まめに連絡したり、「◯◯さんはああ仰っていましたが、もしかしたらこういう物件もお気に召しませんか?」など、私はあなたのことを気にかけていますよ、あなたの願いを実現するために努力していますよ、という事実をを行動で示すことが大切です。
「この人(エージェント)なら、任せても大丈夫」。
クライアントにぜひそう思われたいものです。
学び続けることが大切!
高い成果を生み出す人に見られる、一定の行動パターンのことを「行動特性(コンピテンシー)」といいます。
もちろん、成功する不動産エージェントにも、共通する行動特性があります。
ここまで読んだ方なら、それが何かはすぐに分かりますよね?
そう、自分のためではなく、あくまでもクライアントのために行動する、ということです。
クライアントの願いや価値観を認め、自分のことのように共感し、それを実際の行動に移していく。
それが成功する不動産エージェントに求められる行動特性ですが、もちろん、ただ闇雲に行動するだけではいけません。
クライアントごとに求める幸せの形は異なりますから、それぞれのクライアントが望む行動特性が必要になります。
ではどうすれば、様々なクライアントに応じた行動特性を取れるでしょうか?
木は、しっかりと根を張って養分を吸い上げ、幹を太くしていきます。
幹が大きくなれば、自然と多くの枝を伸ばしていきます。
この枝が、スキルです。

ここで言うスキルには、不動産エージェントに求められる「知識」や「対話力」という大きなスキルの他に、自然な笑顔や相手の望む言葉や行動、時間(タイミング)、立ち振舞などの細やかなスキルも含まれています。
そうした多くのスキルを持つことで、どんなクライアントにもしっかり共感し、彼らのために行動することができるようになります。
このスキルについての詳しくはまた別に説明しますが、ここで大切なのはスキルを身につけるには、まず幹の部分を大きくしなければならないということ。
人間力を不動産エージェントとしての「幹」だとするならば、幹を大きくするのに大切なのが「根」の部分です。
不動産エージェントも同じようにいわば根を張って、自分の栄養になるものを取り入れなければなりません。
そうすることによって、人間力を高めていくことができます。
人間力を高める、つまり承認力と共感力の幅を広げるなら、自然と多くのスキルを発揮できるようになります。そしてそうしたエージェントは、あらゆるタイプのクライントにも(たとえ自分とは価値観が合わないと思えるとしても)寄り添うことができるのです。
ですからやはり、たくさん勉強することが大切。
それがエージェントとしての人間力を高め、結果としてどんなクライアントでも代理人になれるのです。
では具体的に、どんなものを学んで自分に取り入れたら良いでしょうか?
ビジネス書を読むのは、多くの人が行っていて実際に成果を上げています。
哲学書を読むのも良いでしょう。自分自身と深く向き合うことができるからです。

また、自分の憧れている人、成功している人をロールモデルとして、その人を真似るのも効果的です。
どんな手段であっても、自分にあった方法を見つけて、自分の人間力を育ていていく努力を続けることが大切です。
広く、深く自分の根を張って栄養を取り入れ、人間力を高めていきましょう。
そうするなら、不動産エージェントとして必ず成功することができます。
まとめ
不動産エージェントにとって必要なスキルの一つである「人間力」。
それは自分の我を打ち出すのではなく、あくまでもクライアントの希望に寄り添い、それを実現するという「承認力と共感力」を意味します。
そしてその「承認力と共感力」は、実際の行動によってしかクライアントに伝わりません。
事実を伴ったクイックレスポンスによって、クライアントからの信頼が得られます。
広く深く根を張って学び続け、人間力という幹の部分を大きくしていきましょう。
不動産エージェントにとって必要な人間力とは何かを強く意識し、行動し続けるなら、確実に成長することができます。
とは言っても、そう簡単に人間は変われないよ。と思われますか?
確かにそうかもしれません。
しかし、確実に成功する方法があります。
それが、「当たり前の習慣化」です。

次回はその、当たり前の習慣化についてじっくり考えてみましょう。

