フリーエージェント(個人事業主)のモチベーションを保つ3つの方法
個人事業主として働く不動産フリーエージェントに、男性・女性といった性別は関係ありません。
そのため女性でも男性と全く変わらずに、成果を上げた分の報酬を手にすることができます。
とはいえ不動産フリーエージェントとして稼ぐためには、常に営業をし続けなければなりません。
不動産フリーエージェントとしての営業方法については「営業が苦手でも❝できる営業マン❞になれる方法」で説明しましたが、成果を上げるにはやはりそれなりの時間も必要です。
そのため、時には「頑張り続けることに疲れる」こともあるでしょう。
モチベーションの低下は生産性に直接響くため、不動産フリーエージェントにとっても非常に大きなテーマの一つです。
そこで今回は、不動産フリーエージェントとしてモチベーションを保つための3つの方法を伝授します。
ただ単にやみくもに頑張るのではなく、効率的に努力するためのやり方を身につけましょう。
不動産フリーエージェントのモチベーションが下がる理由
ではそもそも、モチベーションが下がるのにはどんな要因があるのでしょうか?
- 新規のクライアントがなかなか見つからない
- ルート探しが苦手
- ようやく見つかったクライアントが、なかなか物件を決めてくれない
- クライアントが契約直前で他の会社と契約してしまった
- etc...
ここで上げたのはあくまでも一例。
不動産フリーエージェントとして働く中でやる気を失ってしまう「モチベーションの低下」の原因は、人によって様々です。
そのため大切なのは、モチベーションが下がる原因を考えるのではなく、モチベーションを保ち続けるための方法を実践することなのです。
モチベーションを保つ3つの方法
では、モチベーションを高く保つためにはどうしたら良いでしょうか?
次の3つの方法を考えます。
- ライバルを知る
- 自分の行動を振り返る
- 自分をやる気にさせるコンテンツを利用する
ではモチベーションを保つための方法を、一つずつ順番に見ていきましょう。
1.モチベーションを保つために「ライバルを知る」
人口減少・少子高齢化、事業者の増加に伴う競争の激化など、不動産業界を取り巻く状況も年々厳しくなってきています。
そのため不動産フリーエージェントが激しい競争を勝ち抜くためには、しっかりとした戦略を立てることが必要不可欠なのです。
「敵を知り己を知れば、百戦あやうからず」
孫子の有名なこの言葉は、ビジネスにもそのまま当てはまります。
高いモチベーションを保ち続けるためには「ライバル(敵)を知る」、つまり自分を取り巻く環境をしっかりと見極めることが重要となります。
では、どのように自分のライバルを知ることができるのでしょうか?
「5フォース分析」を活用してください。
ライバルを知るための「5フォース分析」
ビジネスはよく戦争に例えられますが、不動産業界でも全く変わりありません。
不動産業界の市場規模は2020年1~3月期で12兆1,878億円と、2019年同期の10兆648億円を大きく上回る拡大傾向が毎年続いています。
それに伴い参入事業者も増え続け、全産業の中で不動産業界が10%以上を占める結果となっています(2020不動産業統計集より)。
つまりあなたは、不動産フリーエージェントとして広大な戦場に一人で立っているようなものなのです。
そうした厳しいフィールドの中で勝ち抜くには、自分の周りがどうなっているのか?どんな敵がいるのか?どうしたらライバルに打ち勝つことができるのか?という分析と戦略が欠かせません。
そのために役立つのが、「5フォース分析」なのです。
5フォース分析とは、自分を取り巻く環境を5つのフォース(脅威)に振り分け、勝つための戦略を分析する手法のことを言います。
この図にあるように、不動産フリーエージェントとしての自分を取り巻く脅威を5つに分類します。
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
- 代替品
- 新規参入業者
- 競合の程度
このように自分にとっての脅威を分析し、その上でどうしたら自分の強みが活かせるかを考えるのです。
脅威1:売り手の交渉力
売り手の交渉力という脅威、つまり自分以外にどんな売り手がいて、彼らがどんな戦略を用いているかを分析します。
不動産フリーエージェントにとって一番の驚異となるのは、やはり大手の不動産会社でしょう。
【大手不動産会社の脅威】
- 大手としての高い集客力
【大手不動産会社の弱み】
- 集客コストが高い
- 人材・スキル不足
大手の不動産会社は、顧客を多く抱えているというのが一番の強みでしょう。
しかしその一方で、集客のためのコストが高くついている、慢性的な人材不足によるスキルの低さという弱みが見つかるかもしれません。
このように分析した上で、自分なりの戦略を考えます。
【大手に対する自分の強み】
- 大手が手をつけていない分野への営業
- 高いスキルを培うことによって客単価を上げる
- etc…
大手は集客のために高いコストを支払っているため、あまり儲けが出ない分野に手を伸ばすことには消極的です。そこにチャンスはないでしょうか?(これについては、後でまた詳しく取り上げます)
また「不動産フリーエージェントになるために必要な「知識」とは?資格を得るための勉強方法」でも説明したように、自分のスキルを高めて必要な資格を習得することによって、より単価の高い不動産取り引きを目指すという戦略も有効でしょう。
脅威2:買い手の交渉力
不動産フリーエージェントにとっては、クライアント自体が一つの脅威となりえます。
なぜならクライアントの立場で考えた場合、不動産取引をお願いできる業者は多く存在し、自分の好きな相手を選べるという優位性があるからです。
【買い手の脅威】
- 選択肢が多い
【買い手の弱み】
- 選択肢が多すぎると逆に決められなくなる
【買い手に対する自分の強み】
- エージェントしかできない提案
- 細かなリクエストにも対応できるフットワーク
- etc…
クライアントに選択肢が多いということはそれだけ競争が激しいということでもありますが、同時に自分を売り込むチャンスでもあります。
不動産フリーエージェントならではの、クライアントに寄り添って彼らの本当の願い引き出し、実現させるという強みを活かすなら、きっと自分を選んでもらえるでしょう。
(この点について詳しくは、「クライアントの本当の願いを引き出すためのヒアリング術」をご覧ください)
脅威3:代替品
自分がいくら優れた不動産物件を抱えていたとしても、それに代わるものが多くあると売り込むのも難しくなります。
例えば、空き家。
2018年における日本の空き家の数は、およそ849万戸。なんと全国の住宅の13.6%を占めることになります。
また少子化によって家族の成員数が減ったことから、戸建てではなく賃貸で十分、という考え方も広まってきています。
【代替品の脅威】
- 価格の安さ
【代替品の弱み】
- 資産価値の低さ
- 場所を自由に選べない
【代替品に対する自分の強み】
- どこに住むか?という自由と利便性
- その物件だけの特別な価値の付与
- etc…
空き家は確かに価格の安さが魅力ですが、どうしても物件を中心に考えるため、場所について譲歩する必要も出てきます。
不動産はどんな家に住むかよりも、どこに住むかが大事ですから、その点を強調できるでしょう。
また高い資産価値を付与したり、空き家ならリノベーションを手がけるという戦略もありえます。
脅威4:新規参入業者
「不動産テック」という言葉が生まれたように、不動産業界にもIT企業を始めとした新規事業者が続々と参入してきています。
【新規参入業者の脅威】
- AIやVRといった先端テクノロジーを用いた新たな販売手法
【新規参入業者の弱み】
- テクノロジー活用の遅れ
- 不動産売買のノウハウ不足
【新規参入業者に対する自分の強み】
- アナログ的なアプローチ
- テクノロジーの活用
- etc…
AIを用いた不動産の査定・検索や、VRで現地に行かずとも内見できるヴァーチャル内見など、たしかに新たなテクノロジーは不動産フリーエージェントにも大きな脅威となりえます。
しかし、そうしたテクノロジーはまだまだ現場で十分に活用しきれていないというのが現状です。
そのため、従来どおりのアナログ的なアプローチ方法で顧客を獲得する。逆に自分がそうした先端テクノロジーを取り入れて武器とする、という戦略が立てられるかもしれません。
脅威5:競合の程度
ここで言う競合の程度とは、業界内での競争の激しさのこと(上の図では「不動産仲介業」で表しています)。
不動産業界も限られたパイを奪い合う世界ですから、エージェントにとっては競合の程度も大きな脅威となります。
【競合がもたらす脅威」
- 不動産市場は拡大を続けているが、新規参入も相次いでいる
【競合の程度の弱み】
- 不動産フリーエージェントという存在は、日本においては新規参入業者に等しい
【競合の程度に対する自分の強み】
- 新規参入事業者として、市場内での好きな分野で戦える
- etc…
不動産業界は確かに「レッドオーシャン」ですが、何も強敵の多い土俵で戦う必要はありません。
個人という不動産フリーエージェントの立場を逆に利用し、大きな市場の中での「ブルーオーシャン」を探すという手もあるのです。
- レッドオーシャン:競争が激しい既存市場
- ブルーオーシャン:競争がゆるい未開拓市場
ライバルを知ることによってモチベーションを保てる理由
5フォース分析によってライバルたちを分析し、それに沿った分析を立てることの重要性については理解できました。
では、そのことがどうしてモチベーションの維持に役立つのでしょうか?
5フォース分析によって自分のライバルとなる存在を分析すると、不動産業界で働く以上、どこで戦っても大変だ。ということがよく分かります。
大手の不動産業者で働いても、不動産フリーエージェントとして働いても、厳しい現状があるのは同じ。
であれば、より自由な立場で、クライアントと自分の幸福実現のために働ける不動産フリーエージェントの方がやりがいがあるのではないでしょうか?
ライバルの状況を知ることで、自分が置かれている立場も冷静に分析することができるのです。
それは不動産フリーエージェントとして頑張ろう!というモチベーションを保つのに助けになるでしょう。
その上、ライバルの強みと弱みを分析すれば、それに応じた戦いのための戦略をしっかりと立てることができます。
「不動産フリーエージェントとして成功するのに必要な『当たり前の習慣化』とは?」でも説明したように、ワクワクする目的を立て、その目的を達成するための目標を定め、その目標をクリアするための手段が分かれば、努力することが当たり前になっていきます。
ライバルを知り、そのための対策を立てることは目標達成のための「手段」を講じるということです。
自分が何をすべきか?という点がはっかり分かれば、自然とモチベーションを高く保つことができるでしょう。
モチベーションを保つために「自分の行動を振り返る」
敵を知った後にすべきことは、「己を知る」ことです。
自分を知る、つまり「自分の行動を振り返る」ことも、モチベーション維持に非常に役立ちます。
SWOT分析で自分の行動を振り返る
何のために自分の行動を振り返るのでしょうか?
それは、自分の強みと弱みを知ることによって、適切な戦略を立てることができるからです。
そのために、自分に関してSWOT分析を行いましょう。
SWOT分析とは、次の4つの要素で客観的に状況を確認することを指します。
- S:強み(Strength)
- W:弱み(Weekness)
- O:機会(Opportunity)
- T:脅威(Thereat)
この4つの中で特に、自分の強みと弱みを表に書き出してみましょう。
その時に気をつけたいのが、単に性格上の自分の長所や短所ではなく、これまで自分が行ってきたこと、苦手な分野を挙げること。それが「自分の行動を振り返る」ということです。
そのようにして自分の強み(武器)と弱み(弱点)が分かったら、それでどのようにライバルたちと競い合えるか(機会と脅威)を考えてみるのです。
SWOT分析と5フォース分析を基にした戦略の立て方
例えば、次のような強みと弱みを持つ不動産フリーエージェントがいるとします。
【強み】
- エージェントになる前は福祉関係で働いていた
【弱み】
- IT関連が弱い
このような強みと弱みを持つエージェントであれば、どのような戦い方が有効でしょうか?
5フォース分析を参照しながら、戦うための機会と脅威を考えていきます。
まず、5フォースの中の「IT業界などの新規参入」と被るような市場・分野での競争(脅威)は避けたほうが無難であることがすぐに分かります。
では、勝負になりそうなポイント(機会)は?
福祉関係で働いていたという自分の武器を活かす手段を考えます。
社会の中での弱い人、困っている人に住む場所を提供するという需要は確実に存在します。
しかし、大手の不動産会社はあまりその分野には手を伸ばしません。儲けが少ないからです。
しかし福祉関係で働いていたなら、様々な関連する制度(「住居確保給付金」や「高齢者住宅改修費支援サービス事業」など)を用いながら物件を紹介したり、福祉業界関係者に自分を売り込むなどの、様々な戦術が思いつくかもしれません。
(蛇足ですが、どんな分野で戦うかを決めるのが戦略で、そこでどのように戦うかという方法が戦術となります)
ただ、そうした「ブルーオーシャン」に見えるような市場であったとしても、脅威が全く無いわけではありません。
例えば福祉関係であれば、国や自治体などの行政が事業として不動産の提供を行う。などが脅威として考えられます。
しかし、そのようにして分析を基にした戦略・戦術を打ち立てれば、頑張るためのモチベーションを保ちやすくなるでしょう。
何を努力すれば良いかが明確だからです。
また例え失敗したとしても、むやみに落ち込むこともありません。何がまずかったのか?という反省点もしっかり分析できるため、次につなげやすいからです。
ですから、SWOT分析で自分の強みをどのように活かせるか?また弱みをどう改善できるか?を常に意識してください。
その上で5フォース分析を参照しながら、どのようにライバルたちと戦えば良いのかを考えるのです。
「敵を知り己を知れば、百戦あやうからず」。
どこで、そしてどのように戦えば良いか分かっていれば、高いモチベーションを維持しながら努力し続けることは決して難しくないのです。
3.自分をやる気にさせるコンテンツを利用する
モチベーションを保つために役立つのは、ライバルや自分を知ることだけではありません。
自分のやる気をかき立てるような、外的要素も積極的に活用していきましょう。
不動産フリーエージェントの本場アメリカでは、エージェント専門のコーチング会社も多く存在します。
毎日、電話やメールなどで連絡をとり、その度にちょっとしたアドバイスや励ましの言葉ももらえます。
例えば、コーチに「今週は何件アポを取ったんですか?」と尋ねられると、自分の努力不足を省みたり、どんなことを努力すれば良いのかもよりハッキリするでしょう。
日本ではそうした会社は珍しいかもしれませんが、変わりにモチベーションを駆り立てるようなコンテンツが数多く提供されています。
例えば…
こうした配信サービスを色々試してみて、自分に合ったもの、自分をやる気にさせるものなどを探すと良いでしょう。
また今はコロナ禍なので直接は難しいかもしれませんが、同じ志の人と会って話を聞くのもやる気を保つ助けになります。
モチベーションを維持するための内面的要素だけではなく、こうした外面的な要素もぜひ積極的に活用してください。
まとめ
モチベーションの維持は、不動産フリーエージェントとして活動し続けるためにも非常に重要です。
あきらめないためには、やみくもに頑張り続けるだけではダメ。
「正しく頑張る」ことが大事なポイントです。
モチベーションが下がるのは、ただ単に失敗したときではありません。
- なぜ失敗したのか?
- どのように努力したら良いのか?
こうしたことが分からない時に、それ以上に頑張り続ける意欲も失ってしまうのです。
そのため、今回紹介したモチベーションを保つための3つの方法を活用してください。
- ライバルを知る
- 自分の行動を振り返る
- 自分をやる気にさせるコンテンツを利用する
ライバルと自分の状況をしっかりと分析できれば、不動産業界という大きな戦場の中のどこで、またどのように戦えばよいかが明快になります。
何を行えば良いかが分かれば、あとは努力し続けるだけ。無駄なく頑張り続けることができるので、モチベーションも高く保つことができるのです。
また例え失敗したとしても、改善点もすぐに見いだせるため、落ち込みすぎることもないでしょう。
そうした内面的な要素に加え、自分を奮い立たせるためのコンテンツという外面的な要素も積極的に活用してください。
そのようにすれば、高いモチベーションを保ちながら不動産フリーエージェントとして活動し続けることができるに違いありません。
不動産エージェントという働き方に興味がある方に向けて
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ぜひ、ご覧ください。
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この記事を書いた人
不動産エージェント 藤木 賀子
スタイルオブ東京(株)代表。
25歳で建築業界に入り、住宅・店舗・事務所・外構の営業・設計から施工まですべてを経験。
世界の建築に興味があり、アジア・北米を中心に建築を見て回り、いい家を追求すべく世界の家を研究。結果、いい家とは『お客様の価値観』にあることに気づき、自分が作るよりお客様の代理人としてお客様の想いを可視化・具現化・実現化することが出来る不動産プロデュースの道に。
これまでの経験とスキルを、不動産エージェントとして活躍したい人に向けて発信中。
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