不動産エージェントとして❝できる営業マン❞になれる方法

営業が苦手でも❝できる営業マン❞になれる方法

不動産エージェントを目指すのは、なにも不動産業界人だけとは限りません。

元銀行員や教師、子育てが一段落した主婦など、様々な経歴の方が不動産エージェントとして活躍しています。

不動産エージェントの本場アメリカでは、元は軍人だったという人も。

前職で営業経験がない人も多いため、「営業が苦手!」という不動産エージェントも少なくありません。軍人さんが銃のセールスなんてしませんものね。

そこで今回は、営業が苦手でもできる営業マンになれる方法を伝授します。

不動産エージェントとしての営業のノウハウ、考え方をぜひ習得ください。

不動産エージェントとしての❝できる営業マン❞とは?

不動産エージェントとしてある程度の実績を積んでいくと、クライアントを紹介されることも少なくありません。

しかしやはり特に駆け出しの頃は自分で営業して、クライアントを見つけ出さなければならないでしょう。

不動産エージェントは特定の会社に属さないフリーランスですから、営業ができなければ食っていくこともままなりません。

では、どうしたらできる営業マンになれるのでしょうか?

そのことを知る前に、まずは一般的な営業マンと不動産の営業の違いについて理解しておきましょう。

一般的な営業と不動産の営業の違い

一般的な営業マンは、特定の商品やサービスの特徴・アピールポイントなどを上手に説明することが求められます。

そしてその商品が本当に良いもので、相手のニーズにも合致すれば、無事に商談成立となります。

つまり前提として、まずは売りたい商品やサービスがあって、それを顧客に売り込む。

そのため営業のための「ロープレ」を一生懸命に学んで実践することで、営業成績を伸ばすことができます。

しかし不動産エージェントの場合、そういうわけにはいきません。

不動産エージェントは物件そのものではなく、クライアントの幸福実現のために行動します。

自分が好きな不動産ではなく、クライアントが買いたい・売りたい物件を見つけ出して紹介するのが仕事ですから、ロープレの練習をいくら頑張ってもできる営業マンにはなれないのです。

不動産エージェントとしての❝できる営業マン❞とは?

では、不動産エージェントとしてのできる営業マンになるには、どんなことが求められるのでしょうか?

ごくごく簡単にいうと、クライアントから信頼される不動産エージェントできる営業マンなのです。

不動産エージェントはクライアントの本当の要望を聞き出し、それを形にするのが使命です。クライアントの心の底にある本当の願いを聞き出すにも、そしてその願いを託したいと相手に思わせるにも、しっかりとした信頼関係を築くことが不可欠。

クライアントの本当の願いを引き出すためのヒアリング術でも説明しましたが、不動産エージェントはクライアントの第一印象からタイプを見極め、上手にアプローチしながら話を進めていくことが大切です。

しかしそうやってクライアントの願いを引き出すことができたとしても、実際に契約に至らなければ意味がありません。

無事に成約できるかどうかの境界線となるのが、クライアントから信頼されるかどうかなのです。

考えてみてください。

人生で一番と言ってもいい高額の買い物になる不動産の取り引きを、信頼できない人に頼めますか?

ですから、できる営業マンになりたいのなら、どうしたらクライアントから信頼されるかを第一に考えましょう。

逆に言えばできる営業マンになるために、喋りが上手である必要はありません。

むしろ話し上手であることが、相手に不信感を与えてしまうことさえあるのです。

ですから、自分は口下手で営業は苦手だと思っている人も、心配しないでください。

誰でもできる営業マンになることは可能なのです!

では、どうすればクライアントから信頼されるようになるでしょうか?

大きく分けて、2つの要素が関係してきます。

  1. 信頼されるための話し方
  2. 信頼されるための行動特性

一つ一つ、詳しく見ていきましょう。

❝できる営業マン❞に求められる、信頼されるための話し方

信頼されるための話し方と言っても、上でも説明したようにいわゆる「話し上手な人」になる必要はありません。

むしろクライアントから信頼されるためには、ふさわしいコミュニケーション力、特に営業に不可欠な「提案力」を身につけることが求められます。

営業に必要な「提案力」とは

上でも述べましたが、不動産エージェントの仕事はご契約いただいて初めて成立します。

そのために必要なのは単なるコミュニケーション力ではなく、クライアントに十分に納得してもらうための「提案力」となります。

クライアントが十分に納得いかずに、成約に至ることは決してないからです。

ではクライアントを十分に納得させ、信頼を勝ち得るための「提案力」とはどのようなものでしょうか?

中央大学はコミュニケーションにおける提案力を、「適切な手順・手段を用いてわかりやすく説明したうえで、自分の意見を効果的に伝える」ことと定義しています(https://www.chuo-u.ac.jp/aboutus/gp/competency_pro/competency/definition/communication/)。

そしてその提案力は、次の5つのレベルに分類されています。

  • レベル0:効果的な手順・手段を用いてわかりやすく説明できない
  • レベル1:効果的な手順・手段を用いてわかりやすく説明しようとしている
  • レベル2:効果的な手順・手段を用いてわかりやすく説明できている
  • レベル3:適切な手順・手段を用いてわかりやすく説明したうえで、自分の意見を効果的に伝えている
  • レベル4:適切な手順・手段を用いてわかりやすく説明したうえで、自分の意見を効果的に伝え、自分と異なる意見を持つ相手からも十分な理解を得ている
  • レベル5:適切な手順・手段を用いてわかりやすく説明したうえで、自分の意見を効果的に伝えることで、多様な背景に起因して異なる意見を持つ相手からも十分な理解を得ている


不動産エージェントとしての自分の提案力レベルは?

では、あなたのコミュニケーションにおける提案力はどのレベルにあるでしょうか?

多くの人は、上手に営業するためには「効果的な手順・手段を用いてわかりやすく説明できている」必要があると考え、それを目指します。

しかし上の分類によると「わかりやすく説明できている」とは、レベル2に過ぎません。それではまだまだ足りないのです。

できる営業マンになるためには、少なくともレベル4の「適切な手順・手段を用いてわかりやすく説明したうえで、自分の意見を効果的に伝え、自分と異なる意見を持つ相手からも十分な理解を得ている」話し方をしなければならないのです。

そしてクライアントの要望は、それぞれで全く異なります。そのため不動産エージェントとしてできる営業マンを目指すには、さらにその上のレベル5、「適切な手順・手段を用いてわかりやすく説明したうえで、自分の意見を効果的に伝えることで、多様な背景に起因して異なる意見を持つ相手からも十分な理解を得ている」必要があるのです。

理解→納得→信頼

このプロセスを覚えておいてください。

❝できる営業マン❞に高い提案力が求められる理由

クライアントから信頼されるための提案力について、もう少し詳しく説明しましょう。

不動産エージェントの営業/セールス方法でも説明しましたが、不動産エージェントに求められる営業とは、最後に「クライアントの背中を押してあげる」ことです。

いくら良い物件であったとしても、クライアントに気に入ってもらわなければ意味がありません。

そのため不動産エージェントは自分の紹介する物件が、いかにクライアントの願う幸福を実現させるものであるかを理解してもらわなければならないのです。

しかし、クライアントが願う幸福はそれぞれ異なります。

そのため不動産エージェントには、高いレベルの提案力が求められるのです。

例えばレベル4の提案力を持つ営業マンなら、自分が売りたい商品の説明をして、相手にもその商品の良さをよく理解させることができます。

一般的な営業マンでは、それだけで十分に合格。きっとその商談をまとめることができるでしょう。

しかし不動産エージェントの場合は、さらにその上のレベルが求められます。不動産に対する考え方や好みは、クライアントによってそれぞれ全く異なるからです。

次の例で考えてみましょう。

クライアントの希望を引き出し、それにピッタリの物件を紹介することができました。プロのエージェントとして、これ以上はないという物件です。しかし、相手はその物件に納得いかない様子です。他にもいい物件があるんじゃないか?と疑っているわけです。

そうしたクライアント、つまり「多様な背景に起因して異なる意見を持つ相手」に対してもしっかり説明し、相手に理解してもらう。「ああ、なるほど。自分は〇〇と思っていましたが、違っていたんですね。この物件を紹介された理由がよく理解できました」。クライアントにそう言っていただけるのが理想です。これがレベル5の提案力を持つということなのです。

クライアントがこちらの提案を十分に理解し、納得してくれれば、自然と自分のことを信頼してくれるようになるでしょう。

そのためまずは、自分の提案力がどのレベルにあるかをしっかり分析しましょう。そして自分のレベルが分かったら、その次のレベルを目指してください。

❝できる営業マン❞に求められる、信頼されるための行動特性

不動産エージェントとしてできる営業マンになるためには、提案力を高めるだけでは不十分。

クライアントとの信頼関係を築くためには、何を話すかだけではなく、どう行動するかがさらに重要だからです。

「信頼されない」営業マンとは

では、クライアントから信頼されない営業マンとはどんなタイプの人でしょうか?

それは、言ったことを実行しない人です。

クライアントの質問に対して「分かりました、調べておきます!」と応えておきながら、次に会った時に答えられない。もしくはクライアントから催促されてようやく動き始める…。

こんな営業マンからいくら良い提案をされたとしても、全く信用できないですよね。

相手の質問には必ず答える。それは相手を大切に思っているというメッセージにもなります。

しかし話すこと、答えることは誰にでもできること。

大切なのは、自分が話したことは必ず実行するということなのです。

信頼されるための行動特性=責任ある行動

クライアントから信頼されるためには、責任ある行動を取らなければなりません。

責任ある行動とは、一度引き受けたことは必ず実現させる、ということです。

上と同じような例えで説明すると、クライアントから気に入った物件の値引き交渉をしてほしいと頼まれ、「はい、分かりました!」と元気よく返事するものの、実際は値引きできなかった…。

上の例と違うのは、ここではすぐに実行しています。しかし、クライアントの要望を叶えることができませんでした。

たとえ行動したとしてもそれが実現できなかったのであれば、クライアントからすると行っていないのと同じではないでしょうか。

ですから、クライアントの要望を引き受けたなら、絶対に実現させてください。それが難しいのであれば、最初から引き受けない方が賢明。失った信頼を取り戻すのは、一から築き上げるよりもさらに大変だからです。

❝できる営業マン❞になるための近道

不動産エージェントとして❝できる営業マン❞になるためには、クライアントから信頼される話し方と行動特性が大切だということが分かりました。

しかし、正直どうでしょうか?

自分にはやっぱり無理だ、と思われるかもしれません。

でも心配しないでください。

できる営業マンになれるための「近道」があるのです。

それは、「相手の立場になる時間をつくる」ことです。

「相手の立場になる時間をつくる」とは?

相手の立場になる時間をつくるとはつまり、「これを言ったら相手はどう思うか?この行動を取ったら相手はどう思うか?」を先に考える、ということです。

クライアントに信頼されるには、ふさわしい話し方と行動が求められます。

そのために、話す「前」、そして行動する「前」に、まずは相手の立場になって考えてみるのです。

先ほどの例で考えると、クライアントから値引き交渉を頼まれた時には、「この依頼を引き受けたら当然、相手は値段が下がると期待する。こっちは不動産のプロなのだから。でも、本当に値引きは可能だろうか?安請け合いして交渉が上手くいかなかった場合、クライアントは自分のことをどう思うだろうか?」と、答える前にまず考えるわけです。

答える前に、まず相手の立場で考える。これは簡単そうでなかなか難しい。

しかし今は幸い、SNSやメールでやり取りすることも多くなってきました。

そのため、返事や行動する前に考える時間も取ることができます。

もしくは自分の知り合いや友達と話すときにも、答える前、行動する前に相手の立場になって考えてみましょう。そのように考えるクセ、習慣づけを普段から意識するのです。

そうするならクライアントと直接対面するような場合でも、瞬間的に「まず考える」ことができるようになるでしょう。

そのように相手の立場になってまず考えることができるようになると、自然とクライントから信頼される話し方、行動特性が取れるようになります。

相手の立場になって考えて、それに基づいて話す、行動する。
これができる営業マンになるための一番の近道なのです。

❝できない営業マン❞の特徴とは?

逆に❝できない営業マン❞は相手の立場で考えることをせず、 自分の都合で行動します。

実際に、こんなことがありました。

ネットで気になるサービスを見つけたので、メールで資料を請求しましました。

するとすぐに、営業担当者から明日にでもZoomで説明しますと返信メールが届きます。

その日は都合が悪かったため、◯日にしてほしいと再度連絡しましたが、なかなか返事がきません。ようやく向こうから電話がかかってきたときには、まずこちらのサービスがそちらに該当するか質問したい、と言ってきたのです。

この営業マンについて、あなたらなどう思われますか?

営業の基本はクイック・レスポンスです。

その点この営業マンは最初のレスポンスは早かったため、合格と言えるでしょう。

しかし、その際にこちら(つまり顧客です)のことを考えていたでしょうか?

違いますよね。

こちらの都合を尋ねずに、自分の都合で日にちを指定してきました。

さらにこちらからの再度の問い合わせには返事が遅く、ようやく来た答えは見当違いのものでした。こちらとしては、サービスの詳細を知りたかっただけ。そのために資料を請求したのですが、こちらの望んでいることを考えずに、自分たちの都合だけで行動しているのです。

こういう営業マンはいただけません。

気になっていたサービス自体も検討する気が失せますし、どうしてもそのサービスが必要だとしても、担当者を代えてくれるように頼むでしょう。

クイック・レスポンスは確かに大事ですが、その前に相手の立場になる時間をつくりましょう。そして自分の言葉と行動に対して、相手がどう感じるかを考えるのが大切なのです。

顧客の立場になって行動する

相手の立場になる時間を作って考えたら、それに基づいて行動します。

その点についても、次の例で考えてみてください。

あなたはクライアントと、購入が決まった物件の内装について話しています。

クライアントは事前に色見本で壁紙の色は決めていたので、この日は現地で最終確認を行っているところです。

あなたは「この色で良かったですよね?」とクライアントに確認します。

クライアントは「はい、大丈夫です」と答えますが、どうも口調がはっきりしません。

ではここであなたなら、どのようにクライアントの立場になって考え、行動しますか?

もしかすると、クライアントは色見本のイメージと実物との間に違和感を感じているのかもしれません。しかし一度は自分で決定したため、そのことをなかなか言い出せないでいるのです。

顧客の立場で考える不動産エージェントなら、「〇〇さん、もしかしてイメージと違いますか?もうちょっと明るい色が良かったんじゃないですか?」と尋ねるでしょう。

そして「今からの変更だとお金がかかってしまいますが、後で後悔しないようにもう少し検討してみますか?」と提案できるかもしれません。

さらには、「可能かどうか分かりませんが、金額が変わらずに変更できないか、私が交渉してみましょうか?」とさえ言えるかもしれません。

これが、顧客の立場で行動するということです。

確かに、土壇場になっての壁紙の変更は面倒ですし、余計な時間もかかります。

それでも、クライアントの立場で何が最善かを考え、そのために行動する。

そのような不動産エージェントなら、クライアントからさらに信頼されるに違いありません。

たとえ交渉の結果、余分に費用が発生することになったとしても、クライアントはあなたに感謝するでしょう。自分のために自ら提案し、行動してくれたからです。

クライアントに「はい」と言わせるのではなく、本当に納得した上で自分の提案を受け入れてもらう。

それが信頼される営業マンであり、目指すべき不動産エージェントの姿なのです。

まとめ

不動産エージェントとしての❝できる営業マン❞とは、クライアントから信頼される人のことです。

そのために、信頼されるための話し方と行動特性を常に意識してください

レベル5の「提案力」を身に付けられるように努力しましょう。

クライアントの要望を引き受けたなら、実現させるために行動してください。

その点で助けになるのが、「相手の立場になる時間をつくる」ことでした。

クライアントの立場になって考え、それに基づいて行動するなら、きっと相手から信頼されるでしょう。

営業が苦手な人でも❝できる営業マン❞になることは可能です。

ぜひこうした点を今すぐに実践してみてください!






この記事を書いた人

不動産エージェント 藤木 賀子

スタイルオブ東京(株)代表。
25歳で建築業界に入り、住宅・店舗・事務所・外構の営業・設計から施工まですべてを経験。
世界の建築に興味があり、アジア・北米を中心に建築を見て回り、いい家を追求すべく世界の家を研究。結果、いい家とは『お客様の価値観』にあることに気づき、自分が作るよりお客様の代理人としてお客様の想いを可視化・具現化・実現化することが出来る不動産プロデュースの道に。
これまでの経験とスキルを、不動産エージェントとして活躍したい人に向けて発信中。






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