これからの快適な家づくりに欠かせない「気密」について考えよう!

2025年に予定されている省エネ基準適合の義務化を前にして、家づくりに対する考え方が大きく変わってきています。

家づくりの相談にこられる人でも断熱に関する質問が増えてきていて、家の断熱に対しての意識がかなり上がってきている印象です。

でも、気密についてはどうでしょうか?

実は家の断熱と気密には、密接な関連があるのです。

そこで今回は、快適な家づくりのために気密がどれほど大切か、そして家の気密性を高めるためにはどうしたら良いか?という点について説明したいと思います。

2025年の省エネ基準適合の義務化とは?

ではまず始めに、2025年に予定されている省エネ基準適合の義務化について考えてみましょう。

2022年6月に公布された 「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上 に関する法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第69号)により建築物省エネ法が改正され、2025年から原則、全ての建築物について省エネ基準への適合が義務付けられる予定となっています(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001519931.pdf)。

ここで言われている省エネ基準とは、「建築物が備えるべき省エネ性能の確保のために必要な建築物の構造及び設備に関する基準」を指し、その基準の一つに断熱性能が含まれています。

簡単に説明すると、2025年以降は省エネの家でなければ建てることはできなくなる、ということです。

これは脱炭素社会の実現に向けての施策の一つで、より少ないエネルギーで快適に暮らせる家づくりへと国全体で大きく舵を切ることを意味しています。

実は今でもこの省エネ基準に適合した家づくりが行われおり、そうした家は「省エネ基準適合住宅」、または「長期優良住宅」と呼ばれています。

省エネ基準適合住宅として認定されるためには、断熱等性能等級(断熱等級)4をクリアしなければなりません(他にも基準はあるのですが、ここでは断熱について取り上げています)。

これまで断熱等級4というのは、家の断熱性能を示す基準の最高レベルでした。しかし2022年4月に断熱等級5が、さらに同年10月に断熱等級5と6が新しく設けられました。

2025年の省エネ基準適法の義務化によって、この断熱等級4を満たすことが「義務」となります。

つまり、これまで最高レベルだった家の断熱性能が、最低限満たすべき標準となるのです。

言うまでもなく、断熱性能は家づくりにおいて非常に重要な要素です。

断熱性能が高い家であれば夏は涼しく、冬は暖かい住まいとなり、冷暖房費も抑えられる「省エネ」の家となります。

新設された最高レベルの断熱等級7の家であれば、暖房がなくても快適に過ごせるほど。

実際にハウスメーカーでも、この断熱等級7を目指した家づくりを行っています。

例えば先日、一条工務店のモデルハウスを見学したのですが、基本の商品でも断熱等級レベル7の家づくりを実現しています(https://www.ichijo.co.jp/lp/dannetsuou/)。

このように2025年に予定されている省エネ基準適合の義務化を前にして、家の断熱性能に対する関心は非常に高まってきています。

ところが、家づくりの時に気密のことを気にする人はあまりいません。

しかし家の断熱性能を高めるためには、気密についても考えることが非常に大切なのです。

家の「気密」が大切なのはなぜ?

快適な家づくりのために、気密が大切なのはなぜか?

「気密」とは、簡単に言うとどれだけ空気の出入りがあるかを示すものです。

気密性の高い家であればあるほど、空気の出入りが少ない、つまり隙間風が吹き込まない家ということになります。

いくら断熱性能を高めても、気密性が低ければ全く意味がありません。

なぜならいくら断熱性能を高めて外の暑さや寒さを遮断したとしても、隙間風が入ってきてしまうと夏は暑く、冬は寒い家となってしまうからです。

以前、高性能住宅設計のスペシャリストである「松尾設計室」の松尾さんにお話を伺ったときにも、暖房すると暖められた空気は軽くなるので、上に上がる。しかし普通の家は気密性を高めているわけではないので、暖められた空気が天井から上に抜けていってしまう。さらにそれだけではなく、抜けた分だけ反作用で下から冷たい空気が引っ張られる。そのため、頭は暖かくても足元が寒いという状況になってしまう。足元が寒いと暖かさをあまり感じないので、暖房を強くする。暖房を強くすると結果として空気がさらに上から抜けていって、冷気も余計に引っ張られてしまう。つまり気密性の低いは断熱性能も下がってしまう!という、非常に興味深い説明をされていました(そのほかにも築浅中古・新築建売の断熱性能をあげる方法について非常にためになるお話を聞けるので、ぜひこちらの対談 https://www.youtube.com/watch?v=DySjNbHhfVI をご覧ください)。

つまり断熱と気密はセットにして考えるべきであり、「高気密・高断熱」の家づくりが非常に大切というわけです。

高気密の家には、ほかにも以下のようなメリットが存在します。

  • 冷暖房効率の上昇:気密が高い家では外気が入り込んでこないため、その分だけ冷暖房を効率よく使用することができます。
  • 換気効率の上昇:気密性能が高い家=換気の悪い家、という間違ったイメージを持たれる人がいますが、実は全く逆です。気密性の高い家は屋外から新鮮な空気を取り入れ、外にきれいに流すことができます。ところが気密性の低い家では余計な空気が入り込んでしまうので、効率よく換気することができないのです。
  • 結露やカビを防ぐ:気密性の低い家では外からの暖気や冷気が家の中に入り込み、結果として結露やカビが生じやすい環境になってしまいます。気密性の高い家では結露やカビを防ぎ、結果として長持ちする家となります。

このように気密性を高めることは断熱性の高い家づくりに不可欠であり、結果として住みやすく、心地よい居住環境を整えることでもあるのです。

では気密性の高い家づくりを行うには、何が必要なのでしょうか?

気密性の高い家づくりに必要なこととは?

断熱もそうですが、気密についても本当にわかりにくい。

気密は空気の出入りのことであり、直接目にすることはできないからです。

では、家の気密性を確かめるにはどうしたら良いでしょうか?

断熱については設計上での計算ということになりますが、気密については気密測定を行うことによって確認することができます。

ということで私は今回、引渡し前の新築建売で、実際に気密測定を行ってきました。

この家の設計上の断熱等級は4となっています。

ではこの家の、実際の気密はどの程度なのでしょうか?

気密測定は、このような機械を設置して行います。

測定の前にまず排気口などを全て防ぎ、機械で空気を外に出して減圧します。その時の通気量を測ることによって、気密を測定します。気密性が高い=空気が流れにくい、というわけです。

測定の結果は、こちらの機械で確認します。

実際に測定した結果、この家の気密性(C値)は2.1でした。

C値が2.0を下回ると、一般的に高気密住宅とみなされます。0.1だけ惜しかったですね。

気密については契約上の取り決めはなかったので特に問題はないのですが、測定をしていただいた専門家の話ではこの間取りの家でこの数値は、非常に良い値だとのこと。

実際に家の中に入ったときにも、冷房はつけていないにも関わらず、それほど暑さは感じませんでした。

気密性の高さによって、設計通りの断熱性能を発揮していることが実感できたわけですね。

では、家の気密性の高めるのに必要なこととは?

測定を行っていただいた専門家の話では、やはりとにかく隙間を埋めることが重要、とのことでした。

気密性が高い家とは隙間がない家と同義ですから、とにかく余計な隙間をなくす。材の止めの仕上げやコーキングなどをしっかりやらないと、どこから空気が漏れるか分かりません。そのため、施工を丁寧に行うことが何より大切になります。

施工精度によっては隙間ができて、空気が漏れてしまう。一か所だけ見ればほんのわずかの隙間かもしれませんが、それを家全体で合算すると気密性は大きく下がってしまいます。

隙間が一か所空いているから止めた、と思っても、他のところが空いていたら意味がないわけですね。そのため、建物全体をしっかりと隙間が無いように施工しなければなりません。

ほかにも例えば、調湿気密シートという家の中の湿気を外に放出できる気密シートがあるそうです。それを壁と合体させることでも気密性を高められますが、シート同士のジョイントや、柱や壁周りをどのように施工するかというその精度で、効果も大きく変わってしまいます。

気密については、これだけやっておけば大丈夫!というものは無いそうです。とにかく、一つ一つの施工を隙間ができないようにしっかり行わなければなりません。

ほんのわずかな隙間でも、空気は漏れてしまう。

しかしその隙間は、家が完成した状態では見つけることも非常に困難になります。

実際にこの方が測定した現場の一つでは、たった一つのダクトの穴を見落として、一時間以上探し回ったこともあったんだとか。図面を見ただけでは分からないんですね。

そのため高気密の家づくりに必要なのは、家を建て始める前に、しっかりとしたコミュニケーションをとることです。

設計者や施工者に対して、気密性の高い家づくりをお願いする。

設計はもちろん大切ですが、なにより施工精度によって気密性は大きく変わってしまうからです。

例えば、換気ダクト周りは必ず隙間ができます。そこをしっかりコーキングしましょうとか、ジョイント周りもシートでしっかり囲みましょうとか、そうした一つ一つの作業をしっかり行うことが、気密性の高い家づくりのためには非常に重要なのです。

そのため、気密性を高められるような設計と施工を最初にお願いして、そして実際にそうした丁寧な施工をしてくれる工務店さんに家を建ててもらうことが必要なんですね。

その意味では今回測定してもらった家は、大工さんが非常に良い仕事をしておられると測定した人も誉めておられました。

まとめ

高気密・高断熱の住宅は省エネであるということにとどまらず、家が長持ちして、何よりそこに住む人がより快適で健康的な生活を送ることができるようになります。

ところが、お客さんは断熱のことは気にされても、気密のことは尋ねることさえしません。

興味がないからですね。どうして興味がないかというと、知識がないから。

ハウスメーカーの営業マンも、高断熱をアピールすることはあっても、気密について説明することはほとんどありません。

人間は知らないことに対して興味を持つことは絶対にありません。

その点で私たち不動産エージェントには、クライアントに必要で大切な情報を正しく伝えて、彼らがしっかりと判断できるように助けてあげる責任があります。

2025年の省エネ基準適合の義務化を前に、現時点でも高気密・高断熱の家づくりはマストと言えるでしょう。

不動産エージェントとして断熱だけではなく、気密についてもしっかりとした知識と情報を取り入れて、クライアントに正しく伝えられるようにしたいものですね。






この記事を書いた人

不動産エージェント 藤木 賀子

スタイルオブ東京(株)代表。
25歳で建築業界に入り、住宅・店舗・事務所・外構の営業・設計から施工まですべてを経験。
世界の建築に興味があり、アジア・北米を中心に建築を見て回り、いい家を追求すべく世界の家を研究。結果、いい家とは『お客様の価値観』にあることに気づき、自分が作るよりお客様の代理人としてお客様の想いを可視化・具現化・実現化することが出来る不動産プロデュースの道に。
これまでの経験とスキルを、不動産エージェントとして活躍したい人に向けて発信中。






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