国産材は高くない?!国産材を使ってSDGsにも貢献!
日本の家づくりに絶対に欠かせないものと言えば、やっぱり木材です。
縄文時代にはすでに木材を使った家づくりが行われていたとされていますし、7世紀に建立された法隆寺は、現存する最古の木造建造物として世界遺産にも登録されています。
ざっと数えても日本では、木材を使った家づくりは1,000年以上の歴史を持つわけです。
しかし日本国内で家づくりに使われている木材の半分以上は、外国から輸入されるいわゆる「外材」というのが実情です。
実はこれでも、国産材の比率は近年上がってきてはいるのです。
15~16年前は国産材の使用比率はもっと低く、伐採されずに放ったらかしにされている林野も非常に多かった。
では、国産材のシェアが少しずつ上っているから安心かというと、決してそんなことはありません。
近年ではインドや中国などの新興国で木材の需要が高まっていること、そして円安も加わって木材に関しても「買い負け」が進んできているのです。
つまりこのままでは、日本でもいつ深刻な木材不足になってもおかしくはないのです。
こうした状況を打破するには、やはり国産材の活用をさらに促進していくことが不可欠です。
なにしろ、日本の国土面積のおよそ7割が森林。私たちの周りには、豊かな山林が広がっているのですから。
とはいえどうしても「国産材=高い!」というイメージがあり、それが国産材の普及を妨げているようです。
しかし実は、外材と比べて国産材が高いというのは大きな誤解なのです。
そこで今回は、国産材は外材に比べて本当に高いのか?
そうでないのなら、どうしてそんな間違ったイメージが植え付けられてしまったのか、そして国産材の普及を高めることのメリットについて説明していきたいと思います。
国産材は本当に高いのか?
日本の木材の価格については、林野庁が発表している「木材価格統計調査(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/mokuryu/kakaku/)」で確認することができます。
木材の価格は、木の種類によってもちろん異なります。
しかしこの統計調査を見るとよく分かるのですが、実は国内で最も生産量の多いスギは、国産材と外材で価格に大きな違いはありません。
実際に、原木の価格は世界的に見るとほぼ同じというのは業界的には常識とされています。
もちろん原木そのものでは家づくりには使えませんから、木材となるように加工しなければなりません。
国産材は人件費などの関係で、その加工費用が外材よりも高くなってしまうということはありえます。
しかしそれと全く同じで、外材も輸送費などのコストはかかってしまうのです。
さらに2021年頃に生じたウッドショックによって、外材の価格は急騰してしまいました。その頃の木材の値段は、外材の方が高かったのです。
最近は外材の値段も少し落ち着いてきましたが、こうしたあれやこれについて考えると、国産材と外材の価格に大きな違いはありません。
「国産材=高い!」というのは、一種の都市伝説に過ぎないのです。
国産材が高いというイメージはどうして植え付けられた?
ではどうして、国産材は高いというイメージが植え付けられてしまったのでしょうか?
実はそれは、ブランドイメージによるところが大きいようです。
バッグでも洋服でもなんでもそうですが、ブランド物って高いですよね。
木材も、それと同じ。
国産材には「ブランド材」と呼ばれる、高級木材が存在します。
たとえば、「家を支える『木の強さ』について考えよう!」の記事でも説明しましたが、木材加工メーカーの山長さんでは徹底的な品質管理を行っており、そこから出荷される木材は「山長ブランド」として高値で取引されています。
山長ブランドだけではなく、例えば和室に使われるヒノキ材の柱や、目に見える梁などに使われる材木などは、見た目にも麗しくて美しいものが用いられます。
そうした木材(国産材)はどうしても、普通の柱などに用いられる材に比べると高くなってしまいます。
そうしたことから、「美しい木材=国産材」となり、国産材はどうしても高くついてしまう、という印象を持たれる人が多いのでしょう。
しかしもちろん、国産材の全てがそうしたブランド材ではありません。
しっかりとした品質で、かつリーズナブルな国産材も多く出荷されています。
でも残念なことに、国産材を優先的に使おうと考える工務店さんは決して多くはないのが実情なのです。
それはなぜかというと、木材に関する知識がアップデートされていないから。
確かに、一昔前まえでは外材の方が安くて、かつ品質も安定していたため、国内で流通している木材の多くは外材が占めていました。
その時のイメージをずっと引きずっていて、国産材は高くてとっておきのもの、と考えている工務店さんが少なくないのでしょう。
また家を建てるのは上手だけど、木材のことまでは良く知らないという工務店さんもいらっしゃいます。
木材はプレカット屋さんから仕入れるだけで、そこがどこの国の木材なのかということまで気にしない。
「安くて良いやつをお願い」とオーダーすれば、それが国産材だろうが外材だろうが正直、気にしていないのです。
そうすると、例えばお客さんが工務店さんに「国産材を使いたい」と言ったとしても、「国産材は高いので予算オーバーしちゃいますよ」と答えてしまう。お客さんはプロの言うことだからそうなのだと、素直に信じてしまいますよね。
決してそんなことはないのに。
自分が持っている昔のイメージのままで国産材を敬遠し、お客さんにもそのことを伝えてしまう。
そうしたことが一般の人の間にも、「国産材=高い」というイメージが根付く理由になったのではないでしょうか。
消費者が国産材を使うメリット~国産材とSDGsの関係とは
国産材が高いのは一部のブランド材に限ってのことであり、「国産材=高い」というイメージは単なる誤解であることがわかりました。
では国産材の消費量を高めることは、国内の製材業者や私たち消費者にとって、どんなメリットがあるのでしょうか?
メリット1:森林の活性化
木材を使用するためには木を伐採しなければならず、木を伐採するとCO₂が増えて温暖化が進んでしまう…。
そう考えている人も多いかもしれませんが、実はこれも大きな誤解です。
欧米では1980年代に環境保護の観点から、熱帯雨林で伐採された木材の不買運動が起きました。
ところがこうした一律の不買運動では、適正に樹木を伐採している事業者の木材も売れなくなってしまいます。そうして売れなくなった森林を更地にして農地に転換してしまうなど、結果的に森林破壊が進んでしまう結果になりました。
そのため現在では再び、木材を適正に消費・管理していこうという流れになっているのです。
日本では長らく国産材が売れなかった時代が続いたため、森林の蓄積量が増え続け、現在では50年前の約3倍にまで膨れ上がっているそうです。
手入れされていないままの森林が増えていくと、林業や自然環境という観点からも様々な問題を引き起こす可能性が高くなります。
逆に木材を適正に利用することによって、「植林→管理→伐採→植林」という循環が生まれ、森林は活性化するのです。
樹木を育て、伐採し、そして再び植林して森林を新しく作り出す「再造林」が、SDGsの観点からも非常に重要。
また成長しきった森林よりも、成長期の若い森林の方がCO₂の吸収量が多いというデータもあります(https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/con_5.html)。
日本は森林の蓄積量が増え続けているのが現状ですから、もっともっと国産材を使うことが結果的に持続可能な森林を生み出すことにつながり、温暖化防止にも役立つのです。
メリット2:土砂崩れなどの災害防止
手入れの届いていない森林の抱えるもう一つの問題点が、土砂崩れなどの自然災害のリスクが高まることへの恐れです。
日本の森林の約4割は、人間が手をいれた人工林と言われています。
その人工林を正しく管理しないと、植林した木は細く長く成長し、大雨で根こそぎ流れてしまう危険があります。
国産材が使われず、人工林の蓄積量が増えるとこうした「危険な山林」も増えていってしまうのです。
また植林されたばかりの若い樹木は根が十分に張っていなくて土砂崩れにも弱いイメージがありますが、それも誤解です。
人工林であろうがなかろうが、そもそもの土壌が薄ければ根を張ることができませんし、深層崩壊が起きてしまうと、どれだけ根を張った立派な樹木であっても、やはり流されてしまいます。
2021年に熱海で起きた大規模な土砂崩れはまだ記憶に新しいですが、この災害も人工林が原因ではありません。業者による不正な盛り土が行われていたところに、歴史的な豪雨による地盤の緩みなどが重なって生じたものでした。
このようにどれだけ気をつけていても自然災害は生じてしまうものですが、それでもその危険性を下げる努力は大切でしょう。
国産材の消費量を高めて森林の再造林を進めることは、山林を強めて土砂崩れなどの自然災害を防止するためにも非常に大切なことなのです。
メリット3:持続的な木材使用のために
森林の活性化や土砂崩れなどの自然災害の防止は、国産材を使うことによって結果的にもたらされる大きなメリットですが、何よりも大切なのは、私たちがこれからも持続的に木材を使っていけるかどうか、という観点、いわゆるSDGsですね。
私たちは、世界的に見ても森林資源(紙も含む)の消費大国です。
それでも家づくりに使われる国産材の割合は半分弱、木材全体の自給率はおよそ4割ほどに過ぎません。
要は日本全体で使われている木材のかなりの部分を、輸入に頼っているわけです。
これが日本では採れない資源であれば仕方がないのかもしれませんが、日本の国土面積の約7割は山林。
つまり、資源は豊富にあるわけです。
しかし、木材として使える樹木を育てるには、しっかりとした管理していかなければなりません。
つまり今後も持続的に木材を使っていけるようにするには、国産材の消費を高めて再造林を進めていくことが不可欠なのです。
2021年のウッドショックは良い例ですが、これからも将来的に海外から木材を安定的に輸入できる保証はどこにもありません。
最近は植林される若木の量も少なくなってきているので、今のペースが続くと20~30年後には使える木がなくなってしまうかもしれません。
そのため今、私たちが国産材を消費することが、持続的に木材を使っていくために非常に大切なのです。
国産材の消費量を高めていくには?
とは言っても、普段の生活の中で国産材がどうかを意識することはほとんど無いですよね?
ではどうすれば、私たち一人ひとりが国産材の消費量を高めていくことに貢献できるでしょうか?
一つの方法が、FSC認証のついた商品を意識的に購入することです。
これが、FSCマーク。
FSC認証とは、「森林の生物多様性を守り、地域社会や先住民族、労働者の権利を守りながら適切に生産された製品を消費者に届けるためのマーク」のことです。(FSCジャパン‐Forest Stewardship Councより引用)
簡単に言うと、持続可能な森林経営をされている木材製品ということですね。
ボックスティッシュなどの紙製品についていることが多いですが、最近では様々な業種で国産FSC認証木材を使用した製品が用いられています。
私たち消費者としても、意識的にFSCマークのついている商品を使うことによって、国産材の消費拡大に貢献できるわけです。
そしてやはり、家を建てるときにはできるだけ国産材を使用したいですよね。
もしあなたが家を建てる予定があるならば、ぜひ工務店さんに国産材を使うようお願いしてみてください。
もしも、「国産材なんて使ったら高くなってしまう」なんてことを言われたら、その工務店さんにお願いするのは考え直しても良いくらいです。
なぜならそんなことを言う工務店さんは、木材に関して無知であることを自ら明らかにしているからです。
「家を支える「木の強さ」について考えよう!【後編】」では、工務店さんに「そちらではJAS機械等級区分の構造材を使っていますか?」と聞いてみることが、賢い工務店選びの一つの方法だとご紹介しました。
「JAS材=国産材」ですから、JAS機械等級区分の構造材を使っている工務店さんなら、国産材を使いたいという私たちの希望にもピッタリです。
「JAS機械等級区分って何ですか?」という工務店さんは論外ですが、「うちは国産材ではなく、しっかりとした強度の輸入材を使っていますよ」という工務店さんでも、お願いすればコスパが良くて品質もしっかりしている国産材を使ってくれるかもしれません。
大切なのは、私たちの方から国産材を使いたいという希望をしっかりと伝えること。
全体の建築費の中における材木費(構造体)は、それほど大きな金額ではありません。
国産材を使うことによる予算オーバーを心配するなら、その他に目を向けて見直せる部分はいくらでもあるのです。
私たち不動産エージェントは、クライアントにもそうした賢い家づくりのアドバイスをできるようにありたいものですね。
まとめ
今回の記事では、「国産材=高い!」というイメージが誤解に過ぎないこと、そして私たちが国産材を選んでいくことが、今後も持続的に木材を使っていくために大切だということを説明しました。
国産材の消費量が高まることによって再造林が広がり、SDGsにも貢献することになります。
ところが、国産材であっても伐採した後にきちんと再造林しているものと、そうでないものが混ざっているのが現状です。
正しく再造林されている木材は、全体の4割ほどしかないんだそうです。
木材の値段には再造林のための費用も含まれていますから、本来であれば再造林されていない木材が流通しているのはおかしなこと。
私たち消費者は、怒りの声を上げてもいいくらいです。
しかし私たちが再造林されている木材とそうでないものを見分けることは、残念ながら簡単なことではありません。
でもそうした現状も、木材に関する私たちの見方が変われば、変わってくるはずです。
国産材を使ってください。再造林されている木材を使ってください。と私たち消費者が言うようになれば、業者も簡単にごまかすことはできなくなくなるでしょう。
木材は私たちの家はもちろんのこと、生活のあらゆる分野で活かされています。
日本の大切な資源である木材を子や孫の世代にまでも使い続けていけるように、意識的に国産材を使うことが大切なのではないでしょうか。
私たち不動産エージェントも、工務店さんやクライアントに「国産材の真実」をしっかり伝えて、SDGsに貢献していきたいですね。
この記事を書いた人
不動産エージェント 藤木 賀子
スタイルオブ東京(株)代表。
25歳で建築業界に入り、住宅・店舗・事務所・外構の営業・設計から施工まですべてを経験。
世界の建築に興味があり、アジア・北米を中心に建築を見て回り、いい家を追求すべく世界の家を研究。結果、いい家とは『お客様の価値観』にあることに気づき、自分が作るよりお客様の代理人としてお客様の想いを可視化・具現化・実現化することが出来る不動産プロデュースの道に。
これまでの経験とスキルを、不動産エージェントとして活躍したい人に向けて発信中。
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