不動産エージェントは自分がブランド!
不動産エージェントは自分がブランド!
家の魅力さえも左右する不動産エージェントとは?
日本では不動産の仲介業務は、不動産会社の営業担当者が行うのが一般的です。しかし、アメリカではフリーのエージェントがこの役割を担います。簡単に違いをご説明すると、以下の表のようになります。
日本でもエージェント制を取り入れているところはありますが、まだまだ少数のため、どのような仕事かピンとこない方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ハワイで活躍する不動産エージェントの武田麻美さん(以下、mamiさん)に、エージェントを始めたいきさつやアメリカのエージェントの仕事、仕事をするうえで大切にしていることなどについてお話を伺いました。
不動産エージェントになったきっかけ
まず、簡単にmamiさんの経歴を教えてください。
私は生まれも育ちも東京です。日本では、音大を出てフルートを教えたり、コンサートをしたりと音楽中心の生活を送っていました。
ハワイに来たのは1988年です。こちらでも音楽は続けていましたが、子供が生まれたあとに英語の勉強をしたいと思い、その手段として不動産のエージェントの免許を取りました。
本来はそこで終わりのはずだったのですが、免許を取ったために会社に所属することになりました。そこで大いなる刺激を受けて、それから22年間エージェントを続けています。
日本では宅建を取ってそのままという人も多いですが、
アメリカでは免許を取ったら会社に所属しないと
いけないのですか?
そうです。
免許を取ったあとは、2つの方法があります。
1つは、仕事をするには何処かの会社に所属する。
もうひとつの選択に、フリーズと言ってとりあえず免許は取っておき、仕事がしたくなった時に使用出来るよう
寝かせておく、と言うやり方です。
免許を持っているだけでも維持費がかかるので、フリーズをするのはもったいないと思います。
〇〇アメリカ不動産知識〇〇 不動産免許は2種類(段階)があります
最初はrealtor associate と言うもの。
アソシエートなので会社に所属しないといけない。
経験を積んでいくと Realtor broker の免許を受ける事が出来る。
その免許があれば独立して自分の会社を持つことが出来ます
エージェントの資格を取って会社に所属された
ということですね。
そこからどのように行動されましたか?
始めは何もわからないまま、週に一回行われる会社のミーティングに参加していました。アメリカのエージェントは皆オシャレなんですが、私は若かったこともありTシャツにジーンズのような格好でした。そこで、社長に「マミ、ビジネスだから、それらしい格好をしましょう。それもあなたの個性になるから」と言われたのです。そう言われて、「ああ、そういうことが大切な世界なんだな」と初めて気づきました。
最初に手がけたのは、当時で2億円くらいの物件の売却です。オープンハウスで大勢の人と話すなど、全く初めての経験ばかりで興奮の連続でした。その仕事を通して、エージェントの基本を一から学んだといえます。
成約したときにコミッションが入ってきましたが、お金よりもそこまでのプロセスに大きな意味がありました。さまざまな人との出会いに価値を感じ、それが22年間エージェントを続けてきたモチベーションになっています。
アメリカのエージェントの仕事
日本とは営業スタイルが大きく違うのですね。
アメリカのエージェントは所属している会社に
行く必要はないのですか?
私たちは会社と契約している個人事業主なので、会社に毎日行く必要はないです。以前は週一回、ミーティングのために会社に行っていましたが、今は30分程度ZOOMで顔合わせをしています。
では、お客様と打ち合わせをしたり、
物件の見学に行ったりということが仕事の中心ですか?
そうです。そのため、コミュニティに属することが重要になります。自分を好きになって信じてくれる人が、だんだんクライアントになっていくので、例えばゴルフをしたり、園芸の集まりに行ったり、お茶を飲んだりすることで人脈を広げることが大事です。
また、ビジネスを紹介し合うグループや、全米不動産協会、全米アジア不動産協会などにも属しています。ハワイだけでなくアメリカ本土からクライアントを紹介されたり、私のクライアントが引っ越すときに本土のエージェントを紹介したりすることもあるので、こういうグループに所属することも必要です。
新型コロナウイルス感染症で変わったこと
新型コロナウイルス感染症が流行ってから、
変わったことはありますか?
私のお客様は日本に住んでいる方が多いので、以前は日本でお客様に会ったりセミナーを開いたりしていました。しかし、それができなくなったので、ZOOMなどを使って常にお客様とつながれるようにしています。それまでもラインで顔を見ながらミーティングしていたのですが、ZOOMになってからは資料を共有するのが普通になりました。
内見はしにくくなっていますか?
一時は人数制限がありましたが、今年に入ってからは通常に戻り、身元確認をした上でお招きするようにしています。
また、物件の隅々まで再現できる、マーターポート・3Dバーチャルツアーは必須ツールになりました。これで家の中を撮影してお客様に送ると、自分が家の中を歩いているような感覚で見ることができるので、無駄に内見する必要がなくなります。そういう意味で、物件の見せ方も変わってきたといえます。
お客様の傾向に変化は感じますか?
はい。22年前は別荘を持っているのが当たり前のような資産家の方が多く、ハワイの別荘は時間があるときに訪れて、それ以外の期間はそのままにしておくというスタイルでした。
最近はそういう方に加えて、ビジネスで資産を築いた方たちが、ハワイが好きだからという理由で不動産を購入されています。そういう方の多くは、自分が使わない期間はショートレンタルに出すなどして、収入を上げているのが特徴です。
顧客にはどういう方が多いですか?
私は日本人なので、地元の方よりも日本人に向けてのマーケティングをしています。そのため、私のお客様の80%は、日本に住んでいて、ハワイでセカンドハウスや投資物件を購入される方です。中には子供をアメリカで育てたいということで、家族で引っ越してくる方もいらっしゃいます。
アメリカで要注目の不動産会社
アメリカの不動産会社の中で、
最近成長している会社はありますか?
アメリカではコンパスという会社が急成長しています。実は私もお声がけいただいて3月に移籍しました。
エージェントプロフィールはこちら
コンパスは高い実績を持つエージェントのみを採用し、有能なチームや会社があれば丸ごと吸収します。また、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを含む多くの企業や著名人が投資しているので、資金が豊富です。その資金をテクノロジー開発に充てて、不動産取引の生産性を上げています。
例えば家のマーケティングをする際に必要なビデオも、これまではカメラマンを頼んで時間をかけて作っていました。それがコンパスでは、コンピューター上に写真を並べるだけで、音楽付きのビデオが5分でできます。
エージェントの仕事が短縮化できるシステムを開発していて、そういう面でのサポートが手厚いということですか?
そうです。物件の検索システムなどもとても良くできていて、設定して希望のエリアや価格を入力しておくと、物件のリストが私とお客様のところにメールで届くようになっています。
そこで大事なのが、
エージェントがお客様の希望を把握して設定しているかどうかですね。
それを理解していないと、
お客様が想定しているのと違うものが届くこともあります。
変更点などがあれば細かく設定し直していくのも、
エージェントの仕事ですね。
はい。私は自動でお客様に送らないように設定して、一度自分で確認してから物件の情報を送るようにしています。
物件を探すのはシステムがやってくれて、
そこに自分の手を加えていくということですね。
そうです。優秀なアシスタントがいるような感じです(笑)
不動産エージェントとして大事にしていること
マミさんがエージェントとして働くうえで、
大事にしていることを教えていただけますか?
一番大事にしているのは、自分の考えを押し付けないということです。子育てに通じると思いますが、自分の意見を最初に伝えてしまうと、相手が考えられなくなってしまいます。いつも、クライアントが何を求めているのか、クライアントの視点に立って考えるようにしています。
ただし、私はプロなので、お客様が間違っていると思ったら、意見を押し付けるのではなく、「こういう見方もできますよ」と提案するようにしています。
意思決定ができるようにサポートしていくということ
ですね。お客様の視点に立つためには、
コミュニケーションをとることが大事だと思いますが、
意識的にやっていることはありますか?
クライアントの趣味というのは、何件か家を見ていただければ大体わかります。そのうえで、その家をどのように使いたいか、何が一番大切かなどを聞くようにしています。
他に大事にされていることはありますか?
もう一つ挙げるとしたら、アベイラビリティー(役に立てること)でしょうか。お客様が何か困ったことがあったときに、私を思い出して相談してみようと思っていただけるような、安心感を与えられる存在になりたいです。
そうなるには人間力やコミュニケーション力が必要で、
それを高めることが常にできるエージェントだけが
伸びていくのでしょうね。
思い出深いお客様とのエピソード
過去を振り返って、お客様から信頼されていると感じられたエピソードはありますか?
以前、家を購入してくださったお客様が、5年以上たってから連絡してこられたことがあります。お客様はその家を売りたいということだったので、私は資料を持っていってご説明した後、「他のエージェントさんともお話しされて、必要であればまた連絡してください」と言って帰ろうとしました。
すると、「他のエージェントは頼んでいませんよ。この家を買ったのは、家が気に入ったのと同時に、売っていたのがあなただったからです。なので、売るときもあのときのように、あなたに売ってほしいのです」と言われたのです。そのときはとても感激しました。そういうことが、他にも一度ありました。
5年たっても覚えていてくれたなんてとても嬉しいですね。家を売る側のエージェントだったマミさんが、
よほど印象的だったのでしょうか。
それはわかりませんが、家を見に行ったときによく感じることがあります。それは、そこにいるエージェントさんの空気感が、その家を魅力的に見せるかどうかを決定するということです。
エージェントの雰囲気が、家の魅力を左右することもあるのですね。担当する物件には気持ちが入るほうですか?
私はなるべく物件に思いを入れないようにしています。人間と同じで、家にも長所と短所がありますが、短所も長所に変えられないかなと考えます。例えば、「庭が狭いからイヤ」ではなく、「庭が狭いから手入れが簡単」と考えると、悪いところも良いと思えますよね。そういう風に家を見ると、チャームポイントがわかってくるので、そこを売り込むようにしています。
エージェントとしてのトレーニングや、
メンターについて教えてください。
一般的に、エージェントは会社からトレーニングをしてもらうことはありません。どういう風に働くかはすべて自分の選択です。また、私のメンターだった最初の会社の社長は、仕事ぶりはもちろん、服装から話し方まですべてが素敵な方でした。そういう風になりたいと思い、後を付いてまわって、最初は服装も真似していました(笑)。
実際にメンタルトレーニングもするのですか?
メンタルトレーニングのプロを雇うエージェントもいます。ただ、私は日本の方がお客様で、アメリカと日本ではやり方も違うので、同業者に相談することが多いです。
日本では不動産のエージェントというと、
簡単にお金が稼げるという風に考える人もいます。
お金を稼ぎたいという気持ちが先にたつと、家は売れないですね。お金はあとから付いてくるご褒美のようなものです。お客様をサポートしたり、家を売ったり買ったりすることにパッションがないと、この仕事はできないと思います。
マミさんからのメッセージ
「ワタシゴト」では、ハッピーな不動産取引をできる
エージェント育成を進めています。
そこで、マミさんからエージェントを目指す方に、
応援メッセージをいただけないでしょうか。
思い立ったが吉日といいます。とにかく日々チャレンジで、自分が良いと思ったことをやってみてください。
いろいろなことをやればやるほど勉強になります。
失敗したら一に戻るだけですから、心配しなくても大丈夫
です。そして、エージェントは自分がブランドです。
その意識を忘れないでください。応援しています。
マミさんのお話からは、ハワイで実際に活躍しているエージェントとしてのプライドと、お客様への想いの深さが感じられました。しかし、そんなマミさんも初めは何も知らずに、不動産の世界に飛び込んだのです。
日本とアメリカの違いはあれど、エージェントとして大切なことは共通しています。このインタビューを読んでエージェントに興味が湧いてきたという方は、幸せな働き方であるエージェントについて、ぜひ一緒に学んでいきましょう。
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